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“RIZIN漢塾塾長”石渡伸太郎(36)引退のアツい舞台裏…“兄弟”扇久保博正との友情「次はお互いの弟子同士で」 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byRIZIN FF Susumu Nagao

posted2022/02/05 17:01

“RIZIN漢塾塾長”石渡伸太郎(36)引退のアツい舞台裏…“兄弟”扇久保博正との友情「次はお互いの弟子同士で」<Number Web> photograph by RIZIN FF Susumu Nagao

1月23日、石渡伸太郎は引退エキシビションで“兄弟”扇久保博正と対戦

石渡「おぎちゃんに負けてないっしよ(笑)」

 石渡は扇久保を「本当に“格闘技バカ”なんですよ」と言う。自分にジェラシーを感じていたという扇久保に対して「僕は扇久保選手をエリートだと思ってました。お互い同じようなこと考えてたんですね」とも。

 愚直で武骨な闘いぶりでドン・フライ以来の“塾長”となった石渡だが、練習で磨いてきた技巧にも自信があった。エキシビションではそれを見せたいとも語っていた。実際、扇久保のパンチに完璧なタイミングでタックルを合わせ、テイクダウンしている。「強かった。普通にタックル取られちゃいましたね(笑)」と扇久保。

「おぎちゃん(扇久保)に負けてないっしよ(笑)。タックルはここ5、6年(ケガで)できてなかった。5、6年で出したのは6回くらい。そのうちの3回が今日です」

大晦日メインで勝っても、選手用の弁当を持って帰る

 この引退興行には『漢塾~継承~』というタイトルがついていた。賞金トーナメントをはじめ新鋭たちの試合が中心。そこにも石渡の思いがあった。これからは後進の指導とともに環境を整える提案もしていきたいという。

「もっとこうすればいいのに、ということがたくさんあるので。いろんな人を巻き込んで変えていけたら」

 トーナメントの賞金に触れて、若い選手の収入を気づかうコメントもあった。多くの格闘家は仕事(アルバイト)をしながらブレイクの日を夢見て練習に励む。その頃の気持ちを、石渡も扇久保も忘れていない。

 会場から帰る扇久保の手には、記念のトロフィーと選手用の弁当があった。控室で食べなかったから持って帰る。大晦日のメインで勝ってもそういう感覚は忘れない「おぎちゃん」は、ロビーに残っていたファンへのサインや撮影にも丁寧に応じていた。「お弁当、ちゃんと持って帰るんですね」と言ったら「あ、食べますか?」と返されたのには驚いたが。

扇久保の誓い「石渡選手との絆を背負って闘っていく」

 石渡は闘いの日々を終え、妻と幼い娘のもとに帰った。「石渡選手との絆を背負って闘っていきます」という扇久保は、堀口恭司との3度目の対戦とリベンジを目指す。同時に、いずれ石渡との“3戦目”もあると思っている。

「次はお互いの弟子同士でやれたら」

 それがどの舞台になるかは分からないけれど、そうやって格闘技の歴史を紡いでいくのが2人の仕事だ。弟子たちが闘い、石渡と扇久保がセコンドとして向かい合う時、日本の格闘技界が今以上に大きくて豊かなものになっていてほしいと願う。

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