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「魔物がいると思うこと?ありますよね」記者が思い出す3年前の大失速… 金メダル候補・小林陵侑は北京で羽ばたくか《スキージャンプ》
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph byMaddie Meyer/Getty Images
posted2022/02/05 06:01
3年前の世界選手権では悪夢を味わった小林陵侑。好調をキープする今、北京の舞台でリベンジなるか
今季出場したW杯16戦で7勝し、表彰台は9回。中でも特筆すべきは、重圧が増すジャンプ週間で再び輝きを取り戻したことにある。逆転、最長不倒のビッグジャンプ、大接戦と毎回のように手に汗握る展開の中、第1戦から3連勝。最終戦こそ5位にとどまったが、日本勢初となる2度目の総合優勝の栄誉を手にした。
昨季までの2シーズンは、新型コロナ禍による実戦不足などの影響でやや調子を落とし、W杯優勝は3回ずつ。それでも十分に称賛されるべき成績なのだが、実力を考えれば物足りなかった。
そこから試行錯誤を重ね、再び翼を大きく羽ばたかせることに成功した。今季のジャンプ週間を取材した同僚の取材メモから、小林の言葉を紹介したい。
「(前にジャンプ週間で総合優勝した時は)本当に絶好調で、動けばいいジャンプができる感じだった。今は自分のジャンプがどういう感じか分かってきた」
つまり、3シーズン前は無心で世界一のジャンプが飛べていたが、今は技術面をより意識できている、と考えているようだった。助走姿勢を組んでから重心を置く位置や踏み切る際の飛び出す角度など、繊細な技術が求められる競技。自らの動きへの理解度が高まったことが、再び力強いジャンプを取り戻したことにつながっているようだ。
悩まされてきた降雪の心配は…?
1月29日にはW杯個人第18戦で今季7勝目を挙げ、五輪へ大きな弾みをつけた。五輪の舞台となる張家口は気温こそマイナス20度近くまで下がるが、降水量は少なく、めったに雪は降らない。そのため、大会組織委員会は数百台もの人工降雪機を使って会場を準備した。世界選手権でたびたび降雪に悩まされた小林にとっては、好条件下の実力勝負は大歓迎だろう。
個人ノーマルヒルは2月6日、同ラージヒルは12日に行われる。世界に誇れる日本のエースは、男子団体に加え、五輪初開催となる混合団体でもメダル獲得の原動力として期待されている。
金メダルを首から下げ、「五輪には魔物がいなかったっす」と平然と言ってのける小林が見たい。
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