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平野歩夢、戸塚優斗、ショーンホワイト…大混戦すぎる五輪スノボー「金メダル候補は誰なのか?」を徹底分析〈直前戦況〉
text by
野上大介Daisuke Nogami
photograph byAFLO
posted2022/02/01 17:02
大混戦になると予想される五輪スノーボード男子ハーフパイプ。今、金メダルに最も近い選手は誰なのか?
歩夢が今季初優勝を飾ったマンモスマウンテンのW杯では、ファーストヒットでスコッティが得意とするスイッチバックサイド・ダブルコーク1260という大技にトライした結果ではあったものの、ルーティン後半のバックサイド900で転倒。続くLAAX OPENではルーティンを変え、ファーストヒットで繰り出したスイッチバックサイド1080からつないだバックサイド・ダブルコーク1260で転倒すると、ラストランとなる2本目ではバックサイド900と難易度を下げたにもかかわらず失敗した。
連勝中の優斗の滑りは正確無比そのものだった。転倒することはほとんどない。しかし、王者として迎えた初めてのシーズンがオリンピックイヤーと重なり、追われるプレッシャーは計り知れなかったのかもしれない。
さらに、わずか半年足らずで仕上げてきたとは信じがたい歩夢の滑りに、優斗は動揺しているのではないだろうか。それは、復帰戦で2本とも転倒してしまったスコッティの滑りを見ていても感じた。歩夢の存在が両名を翻弄しているような気がしてならない。事実、筆者がインタビュアーを務めたオンラインイベントで、歩夢がスケートボードからスノーボードに乗り換えて間もないとは信じられない、と本音を吐露していたのだ。
調整中のルーティンが決まれば「誰も抜ける選手はいません」
優斗はX GAMESに招待されていたのだが出場をキャンセルし、ラークスに残って調整を行っていた。彼が目論んでいるルーティンは昨シーズンのW杯最終戦で明らかになっている。その大会の最終ランで披露しようとしたのだが、途中で転倒してしまいベールに包まれたものの、SNOW JAPAN(全日本スキー連盟)でハーフパイプのコーチを務めている村上大輔氏が教えてくれた。
そのルーティンとは、スイッチバックサイド・ダブルコーク1260から入り、キャブ・ダブルコーク1440→フロントサイド・ダブルコーク1260→バックサイド・ダブルコーク1260→フロントサイド・ダブルコーク1440というもの。昨年3月の時点で「このルーティンが決まれば、現時点で国際大会に出ているメンバーの誰も抜ける選手はいません」と村上氏は付け加えてくれた。
スコッティと近しいルーティンになるが、3ヒット目に900を組み込んでルーティン後半に向けてひと呼吸置いているところに、優斗は間髪入れることなくダブルコーク1260を繰り出そうとしているわけだ。練習中ではあるもののフロントサイド・トリプルコーク1440を成功させた実績があるだけに、このルーティンを北京五輪で想定しているのであればラストヒットに組み込む心構えはあるはずだ。