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“笑わない男”稲垣啓太が結婚! 強靭メンタルの秘密と、変えたいと願っていたラグビー選手像「まだ質素なイメージありませんか?」
posted2022/01/26 17:03
text by
近藤篤Atsushi Kondo
photograph by
Atsushi Kondo
今回はそんな稲垣の“強靭なメンタル”の秘密に迫った、Number1007号[絶対的自信の作り方 稲垣啓太「僕の心が折れない理由」](2020年7月16日発売)を特別に再公開します。ブレない稲垣が取材ラストに明かした「鬱陶しいもの」とは?
※これまで有料公開していた記事を無料公開したもの。肩書きなどは全て掲載時のママ
約束の時間より少し前に、白いTシャツで頑強な上半身を包んだ男が待ち合わせの場所に到着する。
取材するのは昨年のラグビーW杯準々決勝、南アフリカ戦の翌々日以来である。
世間ではすっかり有名になってしまったけれど、W杯前も後も、基本的に彼は変わっていない。見た目は怖いが人当たりは柔らかく、丁寧に語り、でも殊更に話を相手に合わせることもない。
元気ですか? と僕は聞く。
今までで1番体は仕上がってますよ、と彼は答える。
稲垣啓太のメンタル。
興味はあるけれど、果たしてこの世にこの男のハートを挫くものなんてあるんだろうか? きっとないんだろうな、と僕は思う。逆にもし、彼が怖れるものがあるのなら、その災厄はきっとこの惑星を滅ぼすに違いない。
それとも、ああ見えて、意外と脆い部分があったりするんだろうか。試合に負けた日の夜は、1人ベッドで泣いてたりとか?
まあいいや、とりあえず聞いてみることにしよう。
稲垣さん、心が折れたことありますか?
「ないですね」
即答だった。やっぱりそうだよな。
練習がキツいとか、問題じゃないんですよ
でもここで納得してしまったらインタビューにならないので、しつこく聞く。
折れはしなかったけれど、ものすごくメンタル的にキツかった、そんなエピソードってありますか? ジャパンの練習がハードすぎて、とか。
「練習がキツいとかは、まったく問題じゃないんですよ。自分が目指してるものに対して、厳しい、苦しい思いをして結果を得ようとするのは当然のことだから」
僕はまた的を外し、メンタル的にちょっと追い込まれる。しかし目の前の大男は基本的に繊細でやさしいので、自ら話を前に進めてくれる。
「メンタル的にしんどかったなってシチュエーション、思い当たるのは2つですかね」
それ、教えてください。