オリンピックへの道BACK NUMBER
「ショックすぎて、言葉になりません」たった1度の五輪で演技中断…織田信成を襲った“まさかのアクシデント”とは?
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJMPA
posted2022/02/07 11:05
2010年のバンクーバー五輪。演技を中断した織田信成に何があったのか?
「ショックすぎて、言葉になりません」
ショートプログラムで4位につけた織田信成がフリーに臨んだ。曲は『チャップリン・メドレー』。コミカルそして軽快な曲にのっての演技は、思いがけない形で中断を余儀なくされる。スケート靴のひもが切れたのだ。
織田はジャッジ席にアピールし、曲が止められた。中断はどれだけ長く続いただろうか。分単位の短い時間が、恐ろしく長く感じられた。応急処置を施し、再開。最後まで滑り切ったが、総合7位で大会を終えた。
「ショックすぎて、言葉になりません。悔いが残ります」
織田が使用していたのはずっと使ってきた古い靴ひもだった。そしてすでに切れたものを使用していた。
「感覚がかわるのがいやだったので、切れたところを結んで使っていました」
だから、悔いが残った。
織田の目には涙が浮かんでいた。後から振り返れば、織田にとっての、唯一のオリンピックだった。
演技における成功や失敗はどうしても、起こり得る
オリンピック、世界選手権、全日本選手権と、カテゴリーは異なる。それでもそこに懸けてきた選手たちにとっては、どのカテゴリーであっても大切な舞台だ。
もう間もなく、北京五輪が開幕する。
演技における成功や失敗はどうしても、起こり得る。
ただ、アクシデントなく、全選手が滑り切ることができるように――そう祈らずにはいられない。