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阿部勇樹は10年前「プレミア名門のオファー」を断っていた… あえて《J2降格寸前だった浦和レッズ復帰》を選んだ真相
text by
塩畑大輔Daisuke Shiohata
photograph byMichael Regan/Getty Images
posted2022/01/21 17:01
レスター時代の阿部勇樹。マンチェスター・シティのコンパニともマッチアップした
2020年。
長年チームを引っ張ってきたクラブの象徴は、誰もいない大原サッカー場でリハビリに励んでいた。コロナ禍も相まって、ケガからの復帰を目指す戦いは孤独なものになった。それでも阿部を現役にこだわらせたのは、あの日、ゴール裏のサポーターのもとに足を向けさせたのと同じものだった。
「やっぱり、2011年にみたレイソルの優勝の様子が、忘れられないんですよ」
サポーターと選手がひとつになって喜ぶ姿には、胸を打たれた。「チーム一丸」が生む力は、計り知れない。当時、オーナー交代で揺らいでいたレスターにいたから、余計に強く感じた。
そして思った。
「確かにレイソルはすごかった。でも、レッズを愛するみんながひとつになったら、もっとすごいことになるはず。そう思ったんです」
秋山翔吾から掛けられた言葉とは
シーズン半ば。シンシナティ・レッズの秋山翔吾外野手と対談する機会があった。場の最後、西武ライオンズ在籍当時から交流が続く7歳年下の友人から、こんな言葉をかけられた。
「競技は違うけど、僕は阿部さんの背中を追っています。阿部さんが引退した年齢プラス5歳まで、現役を続けるつもりです」
「阿部さんがプレーを続けてくれれば続けてくれるほど、僕はモチベーションを持ち続けていられる。だから1年、1年とか言わず、5年、10年頑張ってください」
阿部は苦笑いしてみせたが、すぐに真顔に戻って、エールを返した。
「プレッシャーかけるわけじゃないけど、ファンにいいニュースをたくさん届けてほしい。それにたくさんの人が、勇気づけられるはずだから」
その言葉は、阿部が長年、自分に投げかけてきたものでもあった。やっぱり、レッズにかかわるすべてのひとを一丸にして、喜ばせるような働きがしたい。
それが自分の、最後のミッション。
21年、キャプテン就任とチーム内での初得点
2021年。阿部は再び、チームキャプテンに就任した。相手攻撃陣への素早く、厳しいチェック。そして精度の高いパス。全盛期と変わらないプレーで、攻撃の起点になった。
FC東京とのリーグ開幕戦では、チームのシーズン初得点も挙げた。ゴール後の力強い雄たけびに、サポーターは打ち震えた。阿部自身も、手応えを感じていた。
オレはまだまだやれる。きっと、ミッションをやり遂げられる。
気になる点があるとすれば、足の甲に違和感があることくらいだった。痛みはどんな選手でも抱えている。たいしたことではない。そう思っていた。だがその「違和感」は、やがて重い足かせとなって、阿部を苦しめることになった。
選手人生、最後の決断まで、あと191日。<第3回へ続く>