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「奪われたのは“根拠なき自信”です」DeNA伊勢大夢23歳が数々の救援失敗を経て掴んだものとは?《目指すはクローザー》 

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石塚隆

石塚隆Takashi Ishizuka

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posted2022/01/24 06:00

「奪われたのは“根拠なき自信”です」DeNA伊勢大夢23歳が数々の救援失敗を経て掴んだものとは?《目指すはクローザー》<Number Web> photograph by KYODO

21年10月22日の中日戦、8回表一死満塁をしのぎきって、試合後のお立ち台に呼ばれた伊勢(右)と、勝ち投手のロメロ

 さらにチェンジアップを導入してからのフォームは肩を痛めやすいものだと藤岡コーチは指摘した。またバッター目線からしてもあまり意味のないボールだとも。ピッチングの幅を広げるため球種を増やすのは決して悪いことではないが、使用意図と質の熟成が足りなかったと伊勢は反省をしている。

「通用するボールというものをわかっておらず欲張ってしまいました。自己満足だったし、投げやすいボールを選択してしまっていた」

 足元を見据えた伊勢はファームで調整をつづけ、6月20日に一軍に呼ばれると貴重なリリーバーとしてチームに最後まで帯同された。

 そしてシーズン終盤、それまで好投をしていた伊勢にとって大きなチャンスが到来する。クローザーを務めていた三嶋一輝と山崎康晃の不振により、三浦大輔監督は「抑えは状態のいいピッチャーを使う」と明言。10月3日の巨人戦(東京ドーム)の9回裏に伊勢がマウンドに立つことになった。いきなり訪れた大舞台。DeNAが3‐2でリードしているゲーム。伊勢にとっては初めてのセーブシチュエーションだ。

 しかし最初のバッターの岡本和真をフォアボールで歩かせると、代走の増田大輝に盗塁を許しランナー2塁。後続を三振とライトフライに切って取り2アウトまでこぎつけたが、大城卓三にタイムリーを打たれて同点。さらに敬遠とデッドボールで満塁のピンチを迎えるが、最後は松原聖弥を三振で抑えゲームセット。負けはしなかったが、初セーブはお預けとなった。

失敗を救った三嶋の言葉

 試合後、仕事をまっとうすることができず気落ちしていた伊勢に、このポジションの過酷さを知る三嶋一輝が声をかけた。

「俺は最後のああいった場面で打たれているから、よく粘ったよ」

 この言葉で伊勢は救われた。

「例えば僕が逆の立場だったら、三嶋さんみたいに言えなかったと思うんです。本当、そういう言葉って大事なんだなって」

 痛い思いをしなければ学べないこともある。とくにクローザーというポジションは選ばれし者だけが立てる特別な場所である。三嶋はかつて「クローザーとはいえ9回を投げる中継ぎのひとり」と平常心を保つように語ってくれたことがあったが、とはいえ失敗したときのチームや本人のダメージは大きく、誰よりもメンタルを削られるハードな立場であることを理解している。だからこそ出た、伊勢への言葉だったのだろう。

【次ページ】 セットアッパーとしての武器

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