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「えっ…考えるって何を?」「なんで運動を?」女流棋士・渡部愛を初タイトルに導いた現役棋士による強化法<1日15時間考えることも>
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byYuki Suenaga
posted2022/01/20 17:01
インタビューに応じてくれた渡部愛女流三段。北海道コンサドーレ札幌を応援するなど筋金入りのサッカーファンでもある
見るからに華奢な渡部は、運動が大の苦手。少食で、体力も人並み以下だったという。だから近所のランニングやジムでのエアロバイク、あるいは自宅でのリングフィットなど「運動」を日常化させた。そして、好きなものでも良いから量を食べさせるなど「食生活」も改善させた。
「最初は『なんで運動を?』と思いました(笑)。でも、実際に運動をしてみると大事なんですよね。私は人より体力がなかったですし、エネルギー切れを起こさないようにご飯を食べて、運動して体を作るようにしました。体力があると日々の生活の中でも疲れなくなりますし、スポーツ選手のように対局のために常日頃から過ごすようになりました。そういうところまでは気を使っていなかったので、そこを考えるようになったのは大きかったです」
コンサドーレ札幌のユニフォームを着て
運動といえば、この時期は将棋連盟のフットサル部にもよく顔を出していた。熱心に応援しているコンサドーレ札幌のユニフォームを着用し、ボールを追って汗を流していたものだ。
サッカー観戦が趣味でもある渡部は、関東で札幌の試合があれば、積極的に足を運んで現地に駆けつけるサポーターでもある。昨季のリーグ最終戦となった横浜FC戦も、チケット争奪戦を制し、ニッパツ三ツ沢球技場の最前列で野月とともに応援していたほどである。
「基本的には箱推しなんですけど」と笑顔で話すが、お気に入りの選手には長身FWジェイを挙げてくれた。
「ボールタッチが柔らかくて、あのポストプレーの落とし方が好きなんです。一度、宮の沢の練習場でサインをもらおうとしたこともあります。金色のペンを持っていったら、インクがうまく出なくて『ノット、グッド!』と言われました(笑)。ほんと、普通のサポーターです」
ちなみに2020年のコロナ禍での自粛期間、棋士同士のバトン企画で回ってきた腕立て伏せの動画をジェイのユニフォームを着て撮影したところ、その様子がSNSで拡散され、ジェイ本人の目に触れる事態になっている。
「コンサドーレサポーターが回してくれたんですけど、それをジェイ選手が見てしまった……あれは放送事故です(笑)。恥ずかしかった。ジェイ選手は、絵文字で笑ってくれていました」
なおジェイは、昨季限りで札幌を退団となった。
ホーム最終戦では、途中交代で入る彼に向けて、札幌のゴール裏からイングランド国旗のコレオが浮かび上がる感動的な演出もあった。現地で観戦していた彼女はジェイの勇姿を目に焼き付け、「最後、見にいけてよかったです」と微笑んでいる。