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「えっ…考えるって何を?」「なんで運動を?」女流棋士・渡部愛を初タイトルに導いた現役棋士による強化法<1日15時間考えることも> 

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いしかわごう

いしかわごうGo Ishikawa

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photograph byYuki Suenaga

posted2022/01/20 17:01

「えっ…考えるって何を?」「なんで運動を?」女流棋士・渡部愛を初タイトルに導いた現役棋士による強化法<1日15時間考えることも><Number Web> photograph by Yuki Suenaga

インタビューに応じてくれた渡部愛女流三段。北海道コンサドーレ札幌を応援するなど筋金入りのサッカーファンでもある

 よく将棋とサッカーには共通点もあるというが、何か活かせる考えはあるだろうか。例えば、コーチである野月八段は横歩取り8五飛戦法を流行らせた際に、角行の効きをデビッド・ベッカムのクロスのイメージから着想したことでも有名である。

「いや、戦法を生み出せる力がないので(笑)。ただご飯を食べているときは、よくサッカーを見ています。コンサドーレ以外だと、2021年はフロンターレやマリノスの試合を相当見ましたよ。スタメンも大体、言えます。フォーメーションと駒の動かし方、選手の動きを将棋に重ねてみることはありますね」

 大事な対局の際にはドーレくんの巾着を持参し、気持ちを高めることもしばしばだ。趣味のサッカー観戦は、彼女の将棋に良い刺激になっているようである。

1日15時間盤面に向き合って

 話を戻そう。

 2016年から始まった強化カリキュラムを、渡部は必死に食らいついてやり続けた。自分でやると言ったからには、決して投げ出さなかった。意思を曲げず、継続的な努力を怠らないのは、彼女の才能でもあるのかもしれない。長い日は、食事の時間を除いて1日15時間にも渡って盤面に向き合い、考え続けたこともあるという。野月コーチも根気強く、それに付き合い続けた。

 そして2018年、女流王位の初タイトルを里見香奈から奪取した。初めて臨むタイトル戦の大舞台、そこでトップに君臨する里見を破ったのだから、当時の棋界に衝撃が走ったのは言うまでもない。もっとも、一番驚いたのは当の渡部自身だった。

「びっくりしました。野月先生に教わる前は、自分はタイトルが取れないんじゃないかと思ってましたから。でも頑張れば、結果が出ることもあると初めて感じました。『先生のおかげです』と伝えましたが、『教えたけど、ちゃんと将棋をしたのは自分なんだから、自分を認めてあげなさい』とおっしゃってくれて……でも、本当に野月先生のおかげです」

 決してエリートではなかった渡部愛は、蜘蛛の糸のような可能性にかけて情熱を注ぎ、自らの力で一つのタイトルをたぐり寄せた。野月コーチの指導を受け、わずか2年で成し遂げた初冠だった。<第3回に続く>

#3に続く
タイトル獲得、失冠、再挑戦… 28歳・渡部愛女流三段が「今の勝ち負けはどうでもいい」と言われ続けるワケ<将棋界初のコーチング>

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