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欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
「俺はあいつらが優勝する様子を眺めているだけで終わるのか?」 元アーセナルDFソル・キャンベルが語る“禁断の移籍”と無敗優勝
text by
アルトゥル・レナールArthur Renard
photograph byGetty Images
posted2022/01/12 17:00
黄金時代のアーセナルの最終ラインを支えたソル・キャンベル。47歳となったかつての名DFが栄光に満ちた現役時代を振り返る
歴史に残る大記録は運命的に選ばれるもの
――2001年、ライバルであるアーセナルに加入。2003-04シーズンに無敗優勝という偉業を成し遂げましたが、実際のところは破竹の勢いではなく、綱渡りの連続でした。例えば、終了間際にルート・ファン・ニステルローイのPKがバーを叩いた第6節マンチェスター・ユナイテッド戦(0-0)のように。
「トップレベルの勝負の世界というのは、そういうものなんだ。紙一重の差というか、微妙なバランスの上に成り立っている。とりわけ歴史に残るような大記録というものは、運命的に“選ばれるもの”だと、個人的には思っている。自分たちが記録達成者としての運命を選ぶのではなくてね。俺たちにはどうすることもできなかったあのPKが、バーの下を叩いて入っていたら無敗記録は途切れていた」
――確かに。
「際どい試合は他にもあった。ホームでのリバプール戦(第31節)では、リードされた後半にティエリ(・アンリ)が驚異的なパフォーマンスを見せ、逆転してくれた(4-2)。最後の最後もレスターにリードされていたが、結果的に2-1とひっくり返してシーズンを終えることができた。言いたいことが分かってもらえるかな? 運命的な瞬間が俺たちに訪れてくれたんだ。決して自分たちが選んだわけじゃない。同じことが人生にも言えると思う。そういう瞬間というのは、向こうから訪れるものなんだ」
ベンゲルの下でサッカーの魅力を最高レベルで体験
――監督だったアーセン・ベンゲルからは、どのような影響を受けましたか?
「アーセンがもたらしたスタイルと練習メソッドは本当に素晴らしかった。中盤をバイパスせず、パスを繋いで攻め切るサッカーの魅力を最高レベルで体験することができた。アーセナルは、彼が意図する戦い方を完璧に実行することのできるチームメイトたちにも恵まれていた。だから、自分が監督しているチームでも、まともなサッカーをしたいんだ。俺は、元DFである前に、アーセンと同じ“フットボール・マン”なんだ。
しっかりビルドアップして、躍動感のあるスタイルで戦いたい。中盤には運動量も必要になる。攻撃にはバリエーションを持たせたい。身体が大きくても、ボックス内では小柄な選手に負けない俊敏さでゴールを陥れる選手が望ましい。守備が堅いに越したことはないが、常に攻撃の意識は持っていたい。要はバランスが肝心なんだ。ずっと4バックでプレーしてきたから、自分のチームも最終ラインは4枚がいい。システム的には、攻守に柔軟性のある4-3-3が気に入っている。心臓部となる3センターには得点力のある選手を置きたい。ミドルで相手を脅かせる選手には、昔も今も惹かれるよ」<後編に続く>