Jをめぐる冒険BACK NUMBER

W杯予選・豪州戦ゴールは「適当ですね」「狙いどおり、と言いなさい(笑)」 田中碧と中村憲剛が“師弟対談”でとことん語ったこと
 

text by

飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

PROFILE

photograph bySports Graphic Number

posted2022/01/12 11:02

W杯予選・豪州戦ゴールは「適当ですね」「狙いどおり、と言いなさい(笑)」 田中碧と中村憲剛が“師弟対談”でとことん語ったこと<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

東京とドイツを結んで行われた特別トークイベント。田中碧、中村憲剛ともに今のサッカーについてとことん語ってくれた

 ボランチの田中としてはボールに触れる機会が少なかったが、その状況がチームとして改善され、リンクマンやプレーメーカーとしての田中の存在価値が増したというわけだ。

「ようやくスタートラインに立った感じかな?」とひと安心の先輩が求めるのは、得点だ。

「助っ人は数字を求められるから。今の感じでいけば、そのうちゴールは入りそう?」と問いかけると、後輩はうなずいた。

「1点入れば、どんどん入るだろうなっていう感覚があって。チャンスが日本にいたときよりも多くて。それは自分が意識して、点を取れる場所に入っているので。本数はすごく打っているから、そのクオリティを上げていかないといけないと思っています」

オーストラリア戦は「練習のほうが緊張していて……」

 続いてテーマは「日本代表」へ。

 21年9月に開幕したカタールW杯アジア最終予選。オマーンとの初戦、サウジアラビアとの第3戦を落とし、絶体絶命のピンチに陥った日本代表の救世主となったのが、田中だった。

 引き分けすらも許されない状況だった第4戦のオーストラリア戦で、田中は最終予選初出場・初スタメン・初ゴールという離れ技をやってのけた。

 大一番で普段どおりのパフォーマンスを発揮したことを中村氏が讃えると、田中は舞台裏を明かした。

「緊張していることに気づいていなかったかもしれないです。実はスタメンと分かった練習のほうが緊張していて。2タッチのルールを理解してなくて、4タッチくらいして。悪いところを見せていたので、やるしかないなっていう感じで(試合に)入れたと思います」

「コースは狙っていたんでしょ?」と尋ねたら

 見せ場は前半8分に訪れた。左サイドの南野拓実からのクロスを受けた田中が右足を振り抜くと、ボールは絶妙なコースを突いて逆サイドネットを揺らす。

 試合中継の解説を務めていた中村氏も思わず立ち上がって喜んだ値千金の先制ゴール。「コースは狙っていたんでしょ?」と中村氏が尋ねると、驚くべき答えが返ってきた。

「適当ですね。なんなら外すなって思っていて。力を込めて打ったらダフって。ファーに逃げていくんだろうなって思っていたら……」

「そこは狙いどおりでした、と言いなさいよ」と中村氏も苦笑い。このテーマ最後の質問で「現代表の強みと課題は?」と鋭く切り込むと、田中は現代表チームを分析してみせた。

「世界のトップと戦っている選手も多いので、個のクオリティは間違いなく高いと感じます。それは武器になると思う反面、いろいろな国でサッカーをしているので、それをひとつにしていくのはすごく難しいと感じていて。ドイツでやっている感覚と、スペインでやっている感覚は全然違う。ただ、そこが合致したら、さらにクオリティの高いサッカーができるんじゃないかと思いますね」

 このような分析自体、まさに海外に飛び出したからこそ得られたものだろう。

 さらにお題は「川崎フロンターレ」へと移る。

【次ページ】 成長の加速として大きかった“ある試合”とは

BACK 1 2 3 NEXT
田中碧
中村憲剛
デュッセルドルフ
川崎フロンターレ
カタールW杯

サッカー日本代表の前後の記事

ページトップ