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W杯予選・豪州戦ゴールは「適当ですね」「狙いどおり、と言いなさい(笑)」 田中碧と中村憲剛が“師弟対談”でとことん語ったこと
posted2022/01/12 11:02
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Sports Graphic Number
トークイベントは、先輩の手厳しいひと言からスタートした。
「まずはハノーファー戦、何してくれてるんですか?(苦笑)」
画面の向こう側にいる後輩は恐縮するしかなかった。
「申し訳ないですね。ただただ申し訳ないなっていう。何してるんだっていう感じでしたので……」
12月21日にオンラインで行われたNumberプレミアムトークライブVol.1。川崎フロンターレのバンディエラで、2020年シーズン限りで現役を引退した中村憲剛氏と、21年夏に川崎からドイツ2部のデュッセルドルフに移籍した田中碧選手。師弟関係にあるふたりが「2021年のサッカーをとことん語ろう」というテーマで、1時間半たっぷり対談した。
中村氏は文藝春秋の特設スタジオから。田中はオミクロン株感染拡大の影響で帰国を取りやめ、ドイツから中継での参加となった。
ドイツでスタメン出場が続く理由を言語化すると
冒頭で中村氏がツッコミを入れたのには、まっとうな理由がある。
実はこの1カ月半前、中村氏がデュッセルドルフ対ハノーファーの試合中継のゲスト解説に招かれたのだが、田中はスタメンから外れたばかりか最後までベンチを温め続けたのだ。
しかし、ハノーファー戦後、インターナショナルマッチウイークを挟んで田中の出場機会は一気に増える。12月19日にウインターブレイクに入るまでの直近5試合中4試合でスタメン出場を飾っていた。
「その要因は?」と中村氏が投げかける。
「チームの中でどう活躍するか、自分の中で定まっていなかったんですけど、ようやく90分通して自分を表現できるようになって、信頼されるようになったのかなって。もちろん、ご飯とか言語とか芝とか、環境に慣れたのもありますし、ゲームのスピードやインテンシティに慣れたのもありますけど、自分の中で形ができたのも大きかったと思います」
中村氏が「その形を言語化できますか?」と迫ると、田中はチーム戦術の変化に言及した。
「この1カ月でフォーメーションを変えたのも大きくて。3バックにして後ろに人数が増えたことで、後ろの選手も自信を持ってボールを持てるようになったのと、前に人数がいないので蹴るに蹴れない状況になったのが良かったというか。ボールを運ばざるを得なくなったぶん、自分のプレーを出せる状況がすごく増えたんですよね」
それ以前のデュッセルドルフはボールを繋ぐ意識が薄く、ロングボールを蹴ってしまうことが多かった。