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「コーチとしての康生さんに幻滅したこともありました」鈴木桂治(現・男子代表監督)に井上康生が明かした“ロンドン五輪の後悔”
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byTomosuke Imai
posted2021/12/29 11:06
井上康生の後任として、柔道男子日本代表監督を務める鈴木桂治。「コーチとしての康生さんに幻滅したことも」と語る理由とは
言葉は悪いですけど、これまで所属先の監督は、代表監督に対してペコペコだったんです。手土産を持ってきて、「よろしくお願いします」って。でも井上体制になって、逆になりました。こちらから所属先に出向いて、こういう練習をして欲しいというお願いをするようになった。それで所属チームから、この選手は今はこういう状況です、という報告をしてもらえるような体制を整えたんです。
代表合宿でやったこと「頭の疲労度は何倍にも…」
――W杯のとき、ラグビー日本代表の合宿日数が200日以上あったみたいなことが話題になったので、どの競技の代表も少なくとも100日ぐらい合宿をやっているのかと錯覚しそうになりますが、普通はそんなものですよね。
鈴木 国内外合わせても合宿の日数は1カ月くらいだと思います。でも今までの日本代表は、その期間で強くしようとしていた。どう考えたって無理があるじゃないですか。僕も合宿の時、憂鬱で仕方なかったですもん。行きたくなくて。あんな憂鬱になることって、他になかった。代表合宿って、本来、逆であるべきじゃないですか。「よし、呼ばれたぞ」って。今度は何を学べるのかな、ってワクワクして行きたいじゃないですか。だから、今の選手がうらやましいですよ。いろんなことを学んで、持って帰れるので。
今の代表合宿では、警視庁の方にお願いして危機管理の講義をしてもらったり、他にも、専門家の方に話し方とか脳科学の話をしてもらったりしています。地方に行ったら、書道もするし、座禅も体験するし、茶道もやりましたね。いろんな刺激を与えてもらえる。
――日本代表の練習メニューが劇的に変化して、最初、海老沼(匡)さんは、すごく物足りなくて不安になった、と話していました。