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「コーチとしての康生さんに幻滅したこともありました」鈴木桂治(現・男子代表監督)に井上康生が明かした“ロンドン五輪の後悔” 

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中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byTomosuke Imai

posted2021/12/29 11:06

「コーチとしての康生さんに幻滅したこともありました」鈴木桂治(現・男子代表監督)に井上康生が明かした“ロンドン五輪の後悔”<Number Web> photograph by Tomosuke Imai

井上康生の後任として、柔道男子日本代表監督を務める鈴木桂治。「コーチとしての康生さんに幻滅したことも」と語る理由とは

鈴木 きれいごとになっちゃダメなんです。康生さんも、きれいごとは言わない人でしたね。いいはいい、ダメはダメ、と。はっきりと言っていました。

井上体制で重量級コーチに就任した背景

――12年11月に井上体制が発足し、鈴木監督は、すぐにコーチとして招聘されました。その経緯はどのようなものだったのですか。

鈴木 僕はその年の7月に国士舘大学の監督になったばかりでした。母校をどう立て直すかで頭がいっぱいだったので、当時、強化委員長だった斉藤(仁)先生に「今はちょっとまだ」と言ったら、「断ることは許さん」と。

――そういうものなのですね……。

鈴木 絶対に受けろ、って。選択の余地はなかったですね。

代表と所属先の“関係”が「逆になりました」

――その年のロンドン五輪で「金メダルなし」に終わり、日本代表の再建を託されたわけですが、スタート段階では、どのように立て直していこうと考えていたのですか。

鈴木 極論を言えば、これまでの日本代表の方法論は2つしかなかった。柔道をして強くなるか、トレーニングをして強くなるか。打ち込みをやって、乱取りをやって終わり、とか。ただ、これは真実でもあって、この2つをやらなければ柔道は絶対に強くはならない。僕も柔道の時間を減らしてまで、他のことに時間を費やすべきではないと考えています。

 ただ、それを全日本がやることかと言えば、どうかなという疑問がありました。というのも代表として招集されている期間は年間で60日あるかないか。基本的に365日のうち300日くらいは所属チームにいるわけです。だったら、この2つはそこでやってくれ、と。全日本がやるのは、むしろ、外国人選手の情報だったり、審判の傾向だったり、最先端のトレーニング理論だったりと、横からの刺激だと思った。なので、所属先との連携を強化していくことは必須だと思いました。

【次ページ】 代表合宿でやったこと「頭の疲労度は何倍にも…」

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