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“茶髪にグラサンで区間賞”箱根駅伝の異端児・徳本一善が経験した大炎上「批判が半端なくて、非国民みたいになりました」
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byMutsumi Tabuchi
posted2022/01/01 11:05
駿河台大監督の徳本一善。21年前の箱根駅伝では、茶髪にサングラス姿で区間賞を獲得し一躍時の人となった
さすがに「好きなアニメの解説していいですか?」と来られた時にはこう返したらしい。
「なんで??」
それでも監督として選手たちの関心があるものならアニメでも音楽でも目を通し、学生たちの考えや今の時代の流れを理解しようと努めてきた。
寮には午後10時の門限、消灯時に携帯電話を回収する決まりもある。中には実際に使っている携帯を出さずに、ダミーでごまかす選手もいるのだという。そういう行動も徳本は見透かした上で、チームを変えていった。それはこの1年だけでなく、何年もかけて取り組んできたことだった。
「監督、根拠とか言えないけど、いける気がするんですよ」
予選会前夜、チームの1つの到達点と言える出来事があった。4年生数人と部屋で話をしていた時のことだ。徳本は珍しく弱気になっていたという。
「11位は見えるんだけど(予選通過ラインの)10位はちょっとな。何かが足りないような怖さがあるんだよ。あと一歩、何かが足りない」
だが、その場にいた学生たちの思いは違った。
「監督、根拠とか言えないけど、いける気がするんですよ。自信あるんです」
すべてを見透かしているようでいて選手たちは自分が思う以上に成長していた。あと一歩足りないと思っていたラストピースは彼らがすでに持っていた。
予選会は10位どころか8位で突破。合計タイムに加算されるチーム上位10人のうち半数は4年生が占めた。
2区での棄権から19年、監督就任から10年、不惑を超えた茶髪のエースは、最後は教え子に引っ張られて箱根に戻ることになったのだ。 (後編に続く)
別冊付録には、柏原竜二さん、神野大地さんらも寄稿してくれた「通が教える“僕だけの観戦法”」や、大迫傑さんから後輩たちへのメッセージ、相澤晃&伊藤達彦両選手に取材をした「大迫さんに続き、そして追い越すその日まで」、そして出場20大学の全主務が教えてくれた「我が校のいぶし銀エースを見よ!」も掲載。
大充実の別冊付録、箱根駅伝のテレビ観戦の“相棒”としてお楽しみください。