月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
《2021年スポーツ新聞見出し大賞!》東スポ8日間連続“大谷トップ”の牙城を崩した、7月の「未確認KUMA騒動」とは?
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph byNanae Suzuki
posted2021/12/31 06:01
2021年のスポーツ界の話題を独占したといっても過言でない大谷。その姿をメディアに見かけない日はなかった
『体は熊 犬の顔 衝撃写真』(7月11日)
UMAならぬ「KUMA騒動」としている。
《奇妙な動物の姿を捉えた画像が先月中旬、ツイッターにアップされて人々の注目を集めた。舗装された道路を歩く四足歩行の動物は全身が褐色の毛で覆われており、大きな丸い耳が特徴的。撮影者を威嚇するように牙をむき出しにしている迫力のある姿だ。一見するとクマに見える。いや、イヌにも見える。新種のUMA「ベアドッグ」か。いったい、この動物は何なんだ?》
とても気になるが、よく読むと《飼い主は「犬です」と断言したのだ》とあった。シレっと正体を書いてました。犬が大谷翔平から一面を奪った歴史的な日だった。
しろつめくさのはながさいたら、さあいこう…
さて、私は新聞の社説や政治欄、スポーツ紙、タブロイド紙、週刊誌などを「オヤジジャーナル」と呼んでいる。おじさんが発信しておじさんが受信する。東京五輪のアスリート関連ではこちらの見出しが好きだった。
「かみさま ありがとう 2人にメダル取らせてくれて」(デイリースポーツ7月28日)
これは一体何かと言えば、スケートボートの女子ストリートで金メダルを獲得した西矢椛と銅メダルを獲得した中山楓奈のことだ。キーワードは「ラスカル」。
《西矢は優勝直後のテレビインタビューで、試合中には中山と「ラスカルの話をしていた」と語り、ネットは騒然。77年のアニメ『あらいぐまラスカル』なのか、YouTuberの「らすかる」なのか。中山は会見で「ラスカルを聞いていた」と話していたことから、ヒップホップアーティストのディジー・ラスカル説が急浮上していた。》
このあとテレビ出演でラスカルの意味を問われた2人は「あらいぐまラスカル」のオープニング曲「ロックリバーへ」であると答えた。「なんか調べてたら出てきて、良いなと思ったから聞いてます」(中山)という。
これに感激したのが遠い昔にラスカルを見ていたおじさんたちなのである! デイリースポーツは「ラスカル」の歌詞をなぞり、「かみさま ありがとう 2人にメダル取らせてくれて」という見出しをぶち込んできた。
ちなみに私も「あらいぐまラスカル」のことしか連想しませんでした。興奮する気持ちがわかります。