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酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
二塁・菊池涼介、遊撃・坂本勇人の守備範囲を見ると…?「イメージ抜きの守備指標」でゴールデングラブ賞を検証〈セリーグ編〉
posted2021/12/21 17:16
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Shinya Mano/JMPA
ゴールデングラブ賞は「守備のベストナイン」と言われる。ポジションごとに最も守備が優秀だった選手を選考するという趣旨だが、ベストナインに比べても毎年、議論の的になりがちだ。
野球は「記録のスポーツ」ではある。打撃も投球も実に細かな数字がはじき出され、選手の成績が出てくる。最近はセイバーメトリクスという統計学的な指標も案出され、さらに精緻な評価ができるようになっているが、その中で守備は立ち遅れている印象が否めない。
セイバーメトリクスでは、打球の方向を一つずつ記録して野手の関与の仕方で評価する「UZR」やプラスマイナスシステムなどが案出されているが、最近のMLBでは極端な守備シフトが敷かれるため、選手の能力を計測することはさらに難しくなっている。
ゴールデングラブ賞は、記者投票で決まる。「データよりも印象」で選ばれる選手もいるわけだが――その結果が、客観的なデータと乖離していることもある。
ここでは、セ・リーグのゴールデングラブ賞の選手を、規定試合数以上の同じポジションの選手と比較して、今年の選考について考えていきたい。守備成績は基本として、
・刺殺(直接アウトにした数)
・補殺(他の野手に送球するなどしてアウトにした数)
・守備率=(刺殺+補殺)÷(刺殺+補殺+失策数)
・RF(レンジファクター)=(刺殺+補殺)÷守備出場試合数
この4つでの比較にした。数字の後のカッコは規定試合以上の選手の中での順位。◎マークは受賞した選手。
一塁はビシエド、二塁は菊池と山田のどっち?
【一塁手】
◎ビシエド(中)/守率.994(2)RF8.79(1)
ソト(De)/守率.996(1)RF7.88(4)
マルテ(神)/守率.993(3)RF8.56(2)
オスナ(ヤ)/守率.989(4)RF8.1(3)
一塁手に求められるのは、何といっても「エラーしないこと」だ。守備率の高さは必須の条件だ。これに続いて内野手としてゴロや飛球を処理する守備範囲の広さを表すRFも重要視される。
今のセ・リーグではビシエドは順当だ。昨シーズン終盤、打球に飛びついて負傷したが、守備でも貢献しようという意気込みが表れている。若手だったMLB時代「自己管理できない」と言われていたのがウソのようだ。
【二塁手】
◎菊池涼介(広)/守率.991(3)RF4.40(2)
吉川尚輝(巨)/守率.992(1)RF3.96(5)
山田哲人(ヤ)/守率.992(2)RF4.37(3)
糸原健斗(神)/守率.986(4)RF4.32(4)
牧秀悟(De)/守率.984(5)RF4.95(1)
今回のゴールデングラブで議論が起きているのが、このポジションだ。
菊池が9年連続で受賞したが、二塁手で重要とされる守備範囲を表すRFを数シーズンのスパンで見ていくと、少々趣が異なる。菊池と山田の2017年以降の二塁での守備率、RFの推移は以下の通り。