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荻野貴司と辰己涼介に投票した記者の眼力に脱帽…「イメージ抜きの守備指標」でゴールデングラブ賞を検証〈パリーグ編〉

posted2021/12/21 17:15

 
荻野貴司と辰己涼介に投票した記者の眼力に脱帽…「イメージ抜きの守備指標」でゴールデングラブ賞を検証〈パリーグ編〉<Number Web> photograph by Kyodo News

ゴールデングラブ賞を受賞した(前列左から)柳裕也、甲斐拓也、山本由伸(後列左から)辰己涼介、近本光司、宗佑磨

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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Kyodo News

守備の名手を称えるゴールデン・グラブ賞。近年はポジションによって受賞者の議論が起こることも。2021年について、純粋な守備指標を見ながらセ・パそれぞれの状況を考察してみた(全2回/セ・リーグ編も)

 この項ではパ・リーグのゴールデングラブ賞について見ていこう。この賞を選考する新聞記者の多くは、どこかの球団の「番記者」。どうしてもその球団に対するひいき目が出がちだ。守備成績には、打撃や投球などのようにタイトルとなる数字はない、そういうこともあって、票が割れることが多い。

 パ・リーグのゴールデングラブ賞の選手を、規定試合数以上の同じポジションの選手と比較して、今年の選考について考えていく。守備成績は基本として、

・刺殺(直接アウトにした数)
・補殺(他の野手に送球するなどしてアウトにした数)
・守備率=(刺殺+補殺)÷(刺殺+補殺+失策数)
・RF(レンジファクター)=(刺殺+補殺)÷守備出場試合数

 この4つでの比較にした。数字の後のカッコは規定試合以上の選手の中での順位。◎マークは受賞した選手。

サードで名手だったレアードだが一塁では……

【一塁手】
◎中村晃(ソ)/守率.999(1)RF7.61(5)
山川穂高(西)/守率.996(2)RF8.48(2)
高濱祐仁(日)/守率.994(3)RF9.05(1)
鈴木大地(楽)/守率.992(4)RF8.22(4)
レアード(ロ)/守率.987(5)RF8.37(3)

 一塁手に最も求められるのは「確実にアウトにすること」で、つまり守備率の高さである。

 少し前まで、中田翔、T-岡田など一塁守備に定評のある選手がいたが、今はソフトバンクの中村晃がミットさばきもうまく安定感がある。

 ロッテのレアードはベストナインを受賞。これは順当だ。ただ、三塁手時代は守備範囲が広く名手と言えたが、一塁手としてはやや粗い印象である。

【二塁手】
◎中村奨吾(ロ)/守率.987(1)RF4.80(1)
浅村栄斗(楽)/守率.986(2)RF4.46(2)

 二塁手は守備範囲の広さを示すRF、守備率の順に重視した。

 パの二塁手はポジションが定まっていないチームが多く、規定試合をクリアしているのは2人だけ。2回目受賞の中村は守備機会、併殺参加が多く手数が多い。3番打者としても活躍し、ベストナインも受賞した。

 浅村は西武時代の2013年に一塁手でゴールデングラブを受賞しているが、翌年から二塁を守っている。当初こそ失策が多かったものの徐々に安定した守備を見せており、2019年には二塁手でも同賞を受賞した。現在も中村との差はそれほど大きくはない。ただ今季は打撃成績が今一つで、印象的に見劣りしたか。

【次ページ】 アクロバットな守備だった宗以上に安定していたのは?

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