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“異常な殺気のダービー”宿敵は46兆円資産で金満化の一方で… “どん底の元プレミア常連クラブ”23歳オーナーの「知的な」経歴とは 

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三重野翔大

三重野翔大Shodai Mieno

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photograph byStu Forster/Getty Images

posted2021/12/12 17:00

“異常な殺気のダービー”宿敵は46兆円資産で金満化の一方で… “どん底の元プレミア常連クラブ”23歳オーナーの「知的な」経歴とは<Number Web> photograph by Stu Forster/Getty Images

23歳にしてサンダーランドのオーナーとなったキリル・ルイ・ドレフュス。いったい何者だ?

「今日はサンダーランドAFCの歴史の中で、エキサイティングな新章の始まりだ」

 こう述べたのは今年の2月18日、名門サンダーランドの新会長となったキリル・ルイ・ドレフュスだ。

 既に昨年11月の時点でクラブの株式の一部を買い取っており、クリスマスイブには前会長スチュワート・ドナルドとの取引が成立したと発表されていた。その間に23歳の誕生日を迎え、今年に入ってようやくEFLからの承認がおりて正式に会長となった。

 一体この青年は何者か。

父親はアディダスCEO、マルセイユ会長を務めた実業家

 実は彼の父親、ロベール・ルイ・ドレフュスはかつてアディダスのCEOを務めた実業家。1996年にはオリンピック・マルセイユの会長の座に就き、黄金期から一転低迷した名門を復活させた敏腕でもあった。

 2009年に白血病でロベールが亡くなった後、妻のマルガリータは夫の所有していた会社の経営権を引き継いだ。そしてDJをしている双子の弟と同じく、ロベールの財産の3分の1を相続したのが息子のキリルだ。

 1997年生まれのキリルは幼少期から、父親と一緒にスタッド・ヴェロドロームに通い、マルセイユの活躍を目の当たりにしてきた。彼にとってマルセイユは父親のクラブではなく、いちファンとして応援するクラブだった。

 2011-12シーズンにマルセイユがUEFAチャンピオンズリーグの決勝トーナメントに進出したときには、当時シンガポールの寄宿学校に通っていたにもかかわらず、ラウンド16のインテル戦を観戦するために帰国したという逸話も。後に「あれは(帰国するだけの)価値があったよ」と振り返っている。

プレーヤーとしては「テクニカルで知的な若者」

 もともと選手や監督として活躍することを目指していたドレフュスは20歳の頃、リーズにある学業とフットボールの両立プログラムを提供する大学に入学。国際スポーツビジネスマネジメントの学位取得にむけて勉める傍ら、プレーヤーとしてもトレーニングに励んだ。

 当時学校でアシスタントコーチを務めていたカムラン・ステッドは「キリルはテクニカルな選手で、非常に礼儀正しく、知的な若者だった。競争心があり、とても前向きな性格で、フィールド内外でユーモアのセンスがあった」と学生時代のキリルを振り返っている。しかし怪我を負ってしまったことで、学位を取得せぬまま途中で退学した。

 選手の夢は絶たれたドレフュスだが、フットボールへの情熱は冷めていなかった。

【次ページ】 彼のビジョンと願望は最初から明らか

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