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プロ野球PRESSBACK NUMBER
杉谷拳士が涙した“お兄ちゃん”斎藤佑樹の引退報告「体がボロボロなのは知っていた」「この人は神様なんじゃないか、と」
posted2021/12/04 11:04
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph by
Sankei Shimbun
――栗山前監督同様、特別な存在といえば、今シーズン限りで引退する斎藤佑樹さんだと思います。
杉谷拳士(以下、杉谷) 本当に優しいお兄さん、優しい近所のお兄さんという感じでしたね。佑樹さんには高校時代からお世話になっていますけど、小さい頃から一緒に野球やっていたんじゃないかというぐらい身近な存在だったし、こうして同じ球団でプレーして、長く野球をして、たくさんのことを学ばせてもらいました。
――斎藤さんが引退を決断したと感じた瞬間はありましたか。
杉谷 実は昨年10月下旬に(右肘を)手術することになりそうだと電話をもらったんです。その時、佑樹さんの声のトーンがあきらかに今までとは違っていて。普段であれば絶対にそんなことは言わないんですけど、トミー・ジョン手術になったら復帰までに2年かかるし、別の方法を選んだとしてもどうなるか分からないから、「拳士、もしかしたら気持ちが折れるかもしれない」と。僕のなかでは佑樹さんが辞めるという選択肢はその時点で一切なかったので、「佑樹さん、やりましょうよ。どんな形であれやりましょうよ」「体力が続くのは今しかないですよ」「周りに何を言われようと、野球やりましょうよ」「佑樹さんと一緒にやりたいですよ」と伝えたんです。
そして数日後、トミー・ジョン手術をやらないことになって、「拳士、俺、野球やるわ。前だけ向いて野球やるわ」と言っていたんですが、正直、その言葉で覚悟しましたね。多分、佑樹さんは来年(2021年)でやり切るんだろうなと。それ以降は1年投げ切るためにトレーニングの仕方も変わっていました。
「拳士、今日時間ある?」
――斎藤さんからはどのタイミングで引退の報告を受けたのですか。
杉谷 今年の夏に「拳士、今日時間ある?」と言われたんですが、“なんか嫌なタイミングで時間ある?って聞かれるな”と思ったんですよね……。そしたら、「拳士、今年で辞めるわ」って。覚悟していたとはいえ、もう放心状態ですよ。すぐに返事ができなかったです。うわっ、ついにきてしまった……って。どんな言葉を選んだらいいのかしばらく考えるんですけど、どんなに考えてもまったく言葉が出てこないんですよね。何日後かにようやく「佑樹さん、ありがとうございました」と感謝の気持ちを伝えることはできましたけど……体がボロボロになっていることを知っていましたし、リハビリする姿も見ていたので、「お疲れさまでした」とは言えませんでした。