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プロ野球PRESSBACK NUMBER
杉谷拳士が涙した“お兄ちゃん”斎藤佑樹の引退報告「体がボロボロなのは知っていた」「この人は神様なんじゃないか、と」
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph bySankei Shimbun
posted2021/12/04 11:04
兄のように慕ってきた斎藤佑樹の引退に涙したという杉谷。近くで見てきたからこそ、その凄さを実感している
――斎藤さんのマウンド上、それ以外で戦う姿を一番間近で見てきた杉谷選手にとって、刺激や影響を受けることも多々あったと思います。
杉谷 佑樹さんの姿を高校時代から見てきましたが、プロに入ってもがき苦しみ、体のあちこちを痛め、それでもファンの方々が応援してくれる限りマウンドに立たなきゃいけないんだという姿を見せ続けてくれましたよね。本当にカッコいい生き方だと僕は思っています。
現役中はいろいろな方からいろいろなことを言われていましたけど、そういった声に対しても一切愚痴をこぼさなかった。逆に、「そういう人たちのためにも立ち止まって話を聞いて、話をしないといけないことがあるから。そういう人たちも味方につけられるような立ち振る舞いって大事だよ」と。「今、こうして注目してもらっているだけでもありがたいことなんだよ。そういう人たちも必ず最後には応援してくれるから」って。それを聞いたとき、この人は神様なんじゃないか、カッコいい、涙出てくるわーと思いながら聞いた記憶があります。
目に焼き付けた札幌ドームでの姿
――実際に斎藤さんの引退が決まってから、日々感じることもあったのではないでしょうか。
杉谷 ずっと泣いてましたね。正式に球団から引退がリリースされた日もロッカーでずっと泣いてました。あの時の気持ちは今思い出してもグッとくるものがあります。9月20日の平塚での横浜DeNAベイスターズ戦で投げるとなったとき、リハビリしながらの調整でしたし、「鎌ケ谷でいいんじゃないですか」と話をしたんですが、そのときも「平塚で試合をするのは年に1~2回しかない。そこに見に来てくれる人たち、そこにしか見に来られない人たちもいるから、そのためにもマウンドに上がらないといけない」って。「でも投げられないし、肩痛いんでしょ?」と聞くと、「京都にいい先生がいるから、次の休みに京都に行って肩を見てもらう」と言うんです。少しでも投げられる状態ならマウンドに立つという気概だった。
確か平塚のときは調子が良かったんですよね。ブリブリ腕を振って、130キロ中盤ぐらいで投げていて。「まだいけるじゃないですか」と言ったら、「いや、ダメだ。まずは1回肩を使い切った」と、また鎌ケ谷での試合に向けて調整して。そして最後はやっぱり札幌で投げたいと、1カ月間、頑張ってましたよね。「最後の最後まで腕振る」という思いを持って。
最後の札幌ドームでの姿を見て、あらためて斎藤佑樹という野球選手が歩んできた道がカッコいいなと感じましたし、(松本)剛も高校時代から知っているだけに、佑樹さんの勇姿を見て「カッコいい」と言いながら涙してましたね。
――斎藤さん、そして栗山前監督のお話は尽きませんね。
杉谷 栗山さんの話も佑樹さんのことも、まだまだ話せますね。全然しゃべり足りない(笑)