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勝負の代打策はエースを救えず。
第6戦 オリックス 1-2 ヤクルト
posted2021/12/03 07:01
text by
伊東勤Tsutomu Ito
photograph by
Hideki Sugiyama
敗れはしましたが、オリックス先発の山本由伸投手は、これぞ日本のエースという姿を見せてくれました。
序盤はストレートで押し、フォークも混ぜて翻弄。終盤はスライダーなど曲がり球をうまく使っていました。回を追うごとにコントロールも抜群になっていき、気持ちも入っていました。圧巻だったのは8回に3番の山田哲人から始まるクリーンナップを3者三振に斬った場面。そして自ら志願してマウンドに上がったという9回に内野ゴロ3つで抑えたピッチングです。
自分がこの試合を全うするんだという責任感と気迫が伝わってきました。振り返ると、西武、ロッテでの監督時代にエースとして活躍した松坂大輔や涌井秀章もそういうタイプで、ここが勝負所という試合で「行きます、何球でも投げます」と言ってくれたものです。中嶋聡監督としてもこの日は山本と心中するという試合だったでしょう。結果的にチームは敗れましたが、本当に素晴らしい投球でした。
試合の流れを振り返ると勝敗を左右したのは、終盤のオリックスの攻撃だったのではないかと思います。9回1死二塁と一打サヨナラの場面では、代打に24歳の大下誠一郎を送りました。本当はジョーンズで勝負をかけたい場面ですが一塁が空いているので、先に大下を出してしまった。私はこのシリーズを通じてしぶとい打撃をしていた若月健矢をそのまま打たせても面白かったのではないかと思います。
結果は大下が見逃し三振に倒れ、ジョーンズは申告敬遠。福田周平がセンターフライで無得点。サヨナラ勝ちを狙って勝負に出た代打策が失敗し、オリックスは延長戦に入ってから駒が足りなくなってしまいました。9回以降も坂口智隆や川端慎吾といった頼りになる代打を残していたヤクルトとは対照的で、何とか引き分けを狙うような戦い方をせざるを得なくなり、分が悪くなっていったのです。