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《村田諒太が対戦》「スター選手すら指名戦を避ける」39歳“野獣”ゴロフキンの異次元すぎるキャリアとは?
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2021/11/22 17:01
WBA同級スーパー王者の村田諒太(帝拳)が39歳の世界王者・ゴロフキンと統一戦を行うことが発表された
43戦41勝(36KO)1敗1分と立派な戦績を誇り、引退後の名誉の殿堂入りは確実。もう40歳前のキャリア晩年とはいえ、まだハイレベルな力を残している。そんな背景を考えれば、本当によくこれほどの選手の来日が決まったものだと思わざるを得ない。世代を超えた詳細な比較は避けたいが、ロベルト・デュラン(パナマ)、アレクシス・アルゲリョ(ニカラグア)、ルーベン・オリバレス(メキシコ)、エデル・ジョフレ(ブラジル)などと並び、日本人選手が絡んだ世界タイトル戦の相手として最大級の大物であることは間違いないだろう。
なぜビックマッチは実現した?「これほどの試合は…」
「プロに来る前から言ってきたことですが、これほどの試合は組むこと自体が大変。実現していただいたことに感謝します。ゴロフキンは最強のボクサーだと思っています。その相手に勝って、自分が最強だということを証明します」
ボクシングビジネスのからくりも熟知した聡明な村田が発表会見で述べた感謝の言葉は、決して口先だけのものではなかったはずだ。
この規模のイベントはただでさえ挙行が難儀なのに加え、現在は依然として新型コロナウイルスによるパンデミックの真っ只中。その交渉は並大抵の難しさではなかったはずだ。実際に’20年春には村田対カネロ、その年末にはゴロフキンとの決戦が成立寸前に近づきながら、そのたびにカネロ側の心変わり、ゴロフキン来日時の一時隔離の難しさなどが理由で頓挫を余儀なくされている。
19年、DAZNと6戦1億ドルとされる契約を結んだゴロフキンのファイトマネーの捻出に関しては、すでに発表された通り、以前からボクシング界参入の噂があったAmazonの参入が決め手になった。それと同時に、世界各国のボクシング関係者から多大なリスペクトを集める通称“ミスターホンダ”こと帝拳ジム・本田明彦会長の手腕がなければ今戦の実現は絶対あり得なかった。交渉過程まで含め、歴史的な一戦は本田会長にとっても集大成のメガファイトと言えるのではないか。
“時を超える一戦”になることは確定している
ゴロフキンが初めて米リングに立ってから9年以上、筆者がリングサイドで戦慄を感じてからもう8年以上。お馴染みになったザ・ホワイト・ストライプスの「Seven Nations Army」のテーマに乗って、世界的なビッグネームがいよいよ日本のリングに立つ。どんな内容、結果になろうと、この試合は様々な形で語り継がれる。時を超える一戦になることは、開始ゴングが鳴る前からもう確定している事実なのである。