甲子園の風BACK NUMBER
プロ野球スカウトがうなる「野田キャノン」⋯猛打の九州国際大付に“22年ドラフト候補”野田海人あり《九州王者が明治神宮大会へ》
posted2021/11/19 11:07
text by
菊地高弘Takahiro Kikuchi
photograph by
Takahiro Kikuchii
その二塁送球を見た瞬間、大袈裟ではなく甲斐拓也(ソフトバンク)の姿が重なった。
身長173センチ、体重70キロという平凡な体格ながら、力強く左足を踏み込んで放たれた送球は二塁に向かって低く、加速していく。試合中にも一塁ランナーの二盗を余裕で刺すシーンがあり、圧倒的なスローイングを見せつけた。
「甲斐選手の技術を参考にしてきた」
今春4月開催の高校野球九州大会。九州国際大付の山本大揮、柳川大晟の大型右腕コンビが目当てで訪れた大分・別大興産スタジアムで、両投手以上の衝撃を受けたのは2年生捕手のスローイングだった。
捕手の名前は野田海人。試合後、野田に「すごい強肩ですね」と声をかけると、はにかみながら「肩には中学時代から自信がありました」と応じてくれた。
フレッシュリーグの高田ファイターズに所属していた中学3年時点で、遠投の距離は110メートルを計測したという。
「二塁送球する際には、ピッチャーのベルトの高さより高くいかないように練習しています」
超人的な言葉が仰々しく聞こえないことは、試合中に思い知らされていた。率直に「甲斐選手の姿が重なりました」と感想を伝えると、野田はうれしそうにこう答えた。
「甲斐選手の技術を参考にしてきたので、うれしいです」
参考にしたのは足の運びだという。投手からの投球を捕球する際、左足を一歩前に出しながら捕り、ステップする。野田の力強い踏み込みは、甲斐の影響だったのだ。
野田は高校2年春の時点で「高卒でプロに行きたい」と希望を語り、こう続けた。