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《阪神ドラ1》プロ入り前の今、森木大智は何を思う? 「落ちるところまで落ちたから、もういいわと」「阪神に自分は向いている」
text by
菊地高弘Takahiro Kikuchi
photograph byTakahiro Kikuchi
posted2021/11/15 11:04
阪神ドラ1指名から1カ月。取材に応じた高知高3年・森木大智
「落ちるところまで落ちたから、もういいわと」
年が明けて今年2月。森木にとって大きな転機があった。左足首を捻挫するケガを負ったのだ。春の大会を間近に控えての故障。責任感の強い森木だけに、さらに自身を責めても不思議ではなかった。だが、森木はここで「逆にいい方向にいくんじゃないか」と思ったという。
どうしてそう思えたのかと聞くと、森木は爽やかな笑顔をたたえて「単純にしんどすぎて」と答えた。
「落ちるところまで落ちたから、もういいわと。考える時間もできたし、逆に見つけられるものもあるから。だからケガをしてよかったと思ったんです」
この頃から、森木の状況は好転していく。前年秋には「一人で考えるための空間がほしい」と2人部屋の寮を出て、土佐市の実家から学校に通っていた。
スマートフォンから離れ、本から離れ、自室でボーッと天井を眺める。すると、不思議と「こうしてみよう」というアイデアが湧いてきた。そして、いかに自分が周りの評価に振り回されているかに気づかされた。
「批判的な言葉に対して、『なにくそ!』と気にしていた自分もいたんですけど、その感情はムダだなと気づいたんです。人にどうこう評価されても、結局は自分がどうあるか。大事なのは自分の中での感覚だと。それから、『いくらでも批判してくれていい』と思えるようになりました」
それ以来、森木は自分の内なる感覚を研ぎ澄ますようになった。捻挫から復帰した直後、5月1日の四国大会では自己最速の154キロをマーク。これまでの鬱憤を晴らすようなパフォーマンスに、スカウトからの評価はうなぎのぼりだった。
それでも、甲子園には最後まで手が届かなかった。夏の高知大会決勝は宿敵・明徳義塾に3対5で敗戦。前述の通りアームアングルの低いフォームでは、ボールに効率よく力を伝えられず、最後は握力が失われていた。森木は「最後の最後まで投げ切れない詰めの甘さは自分の許せない部分です」と語る。