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「金で金メダルを買った」と誹謗中傷された橋本大輝の東京五輪跳馬の採点だが… 審判員が語る当時の心境と《公正な評価》である理由
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2021/11/09 11:00
東京五輪個人総合で金メダルを獲得した橋本大輝
「跳馬は経験を積んだ審判になればなるほど、回避したいと思う種目なんです。他の種目と比べると演技時間は短いのですが、短い時間のなかでチェックしなければならないポイントが多い。さらにそのなかでしっかりと格差をつけなければならないので、慣れれば慣れるほど難しさを感じる種目ですね」
一瞬でも目を離すと演技が終わってしまう。跳馬に限ったことではないが、演技中は選手からかたときも視線を外せない。また種目ごとに見るポイントが異なるため、当然ながらそれらをすべて把握しておかなければならない。
たった一瞬でも手元に目を落としたら……
その上、技にはそれぞれさばき方があるので、その理想像を頭に描くことができていなければ、瞬時に減点を見極めるのは困難だと言う。しかも、審判の採点は選手同様一発勝負。演技後にビデオで確認することはできないのだ。
「たった一瞬でも、記録を取る手元に目を落としたら技や着地を見逃してしまうかもしれないし、それがメダルの行方を左右することにもなりかねません。選手が長年かけて積み重ねてきた努力を台無しにするわけにはいきません」<続く>
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