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「藤井聡太三冠が負けて机に突っ伏してる…」強さも悔しがる姿も“絵になる” 観る将マンガ家が描く《10月の将棋ハイライト》
text by
千田純生JUNSEI CHIDA
photograph by日本将棋連盟/Junsei Chida
posted2021/11/02 11:06
観る将マンガ家・千田先生が描いた「10月の将棋ハイライト」。今年度のイラストは関連記事からもご覧になれます!
ちなみに見る視点が違うな……と思ったのは妻氏との会話でのこと。棋士のファッションに注目してる妻氏は「カーディガンの季節ね~、ふふふ」と喜んでました。なるほど、そういう楽しみ方があるのかと……ちゃんと理解しきれてはいないけど(笑)。
順位戦B級1組は折り返しを迎え、藤井三冠は6勝1敗で2位。A級昇格ラインにつけています。その藤井三冠を上回るのが、ここまで6連勝の佐々木勇気七段です。藤井三冠のデビュー後連勝記録を止めたことで有名になった佐々木七段。視線や雰囲気からにじみ出る闘志メラメラな様子、とてもキャラクターが立っていますよね。3位の千田翔太七段(名字が一緒!)、4位の三浦弘行九段も含めた熾烈な昇級争い、後半戦も目が離せません。
竜王戦で3連勝、録画のNHK杯での敗戦では……
(3)藤井三冠、竜王へあと1勝。NHK杯ではまたも「地球代表」に……。
最後は竜王戦七番勝負と、今月の藤井三冠についてです。竜王戦第1局では僕たち夫婦が観戦プログラムへと足を運び、豊島竜王や藤井三冠が間近にいて息が止まるかと思ったという出来事はまた別途見ていただくとして、第1局から藤井三冠の強さが際立っています。
仁和寺で開催された第2局、そして10月30、31日と福島県いわき市で開催された第3局と藤井三冠が勝利を積み重ね、史上初となる“10代四冠”へ、あと1勝としました。
突然ですが……マンガ『将棋の渡辺くん』を読んだのですが、あの渡辺名人が今年2月の朝日杯オープン戦準決勝について「藤井さんはどこから攻撃してくるかわからず、警戒しすぎて疲弊した結果、エネルギーが尽きてミスが出た」といった感じで表現されていた――との描写がありました。それを踏まえると、これだけの相手と立て続けに戦う豊島竜王は、本当にタフな戦いを強いられているのだろうとも感じます。
とはいえ王将戦挑決Lでも触れたように、豊島竜王の強さは折り紙付き。竜王としての意地をどのように見せてくれるか、11月12、13日の第4局を見守ります。
さて竜王戦を含めて勝利を積み重ねている藤井三冠ですが、31日放映のNHK杯では、ショッキングなシーンが!
僕も編集担当の方も「あ、スマホで竜王戦、テレビでNHK杯同時視聴してました」とシンクロしてましたし、将棋ファンの皆さんはもうご存じでしょうが、「地球代表」でお馴染み――深浦康市九段の完璧な研究将棋の前に敗れました。
解説の稲葉陽八段も「深浦九段の快勝譜です」と言うほどでしたが……対局後のカメラが映したのは、机に突っ伏す藤井三冠の姿。悔しさなのか、それとも脳内でどこが良くなかったのかを必死に考えているのか……結果と内容の両方を追求する姿勢、でもどことなく19歳の少年っぽさを感じさせる両面性が、絵になるというか。
負けてもインパクトを残す、という意味で、スター性を持っている人物なんだろうなと感じます。感想戦を始めようと対局場に来た稲葉八段は“どうしよう”という感じでもありましたが(笑)。