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ビジャレアル所属の11歳日本人に聞いた“日本とスペインの違いって何?”…門戸を開くラ・リーガの本気度
text by
栗田シメイShimei Kurita
photograph byLaLiga
posted2021/10/31 11:01
ビジャレアルに所属する高橋琉以(るい/11歳)君と高田想(たかた・そう/10歳)君。現地の学校に通いながら、スペインサッカーの教育のもと技を磨いている
ビジャレアルに所属する高橋琉以(るい/11歳)君は、はじめてチーム練習に参加した際は、六軍相当のカテゴリーでプレーしていた。だが、そこから頭角を現し、現在では同世代の一軍でプレー。日本で行われたエスパニョールキャンプ、ASローマのキャンプでMVP獲得経験もある高橋君は、現地での生活をこう話す。
「ビジャレアルの考え方として、少し技術はおろそかになっていても、戦術や競争心の部分を重視していると感じます。スペインに来て気づいたのは、テクニックは日本の方が高い箇所もあるけど、止めて、蹴るという部分は圧倒的な差があった。身長差もあり、体の使い方を考えないと怪我をするくらい当たりも激しい。でもそれがスタンダードだから、競争がすごい。最初は不安もありましたが、改めてここなら成長出来るという感覚を持っています」
Jクラブの下部組織からもらっていたいくつかの「合格」を蹴り、強い意志を持ってスペインに渡ったのは、東海林大河(13歳/しょうじ・たいが)君だ。セルタのU-13チームで日々汗を流す東海林君も、現地の学校に通いながら異国の地で寮生活をしている。わずか13歳で親元を離れての生活に不安はないかと聞くと、充実感がはるかに勝ると目を輝かせる。
「セルタのチームメイトを初めて見た時、『本当に同じ世代か』と思うほどサッカーが成熟していました。時間帯によりボールを繋ぐ局面、揺さぶりなどを使い分け、この世代から指導に組み込まれていた。練習内容はロンド(ボール回し)を重視していて、パスミスがほとんどない。その前提の上で、ボールを受ける体の向き、サポートの距離などを落とし込んでいくんです。何よりもプレーの強度が違いました。一方で個々の能力という点ではそこまで劣っている感覚はなく、サッカーに慣れれば日本人でもやれるという自信も深まりました」
デメリットは公式戦に出場できないこと
小中学生でありながらしっかりと言葉にできる力を持っていることに驚かされたが、一方で若年層での長期留学は決してメリットばかりではない。
大きな問題になるのは、FIFAルールの兼ね合いで正式な入団扱いとはならないため、一軍がプロチームとの公式戦には出場できないこと。プロではないリーグにカテゴリーを落とせば、提携先の他クラブへの派遣という形での試合出場は可能だが、高いレベルでの実戦経験を積む機会は限定されるのだ。さらに、日本の学校教育を受けることを放棄することになり、教育的な面でのリスクも伴う。また当然、予算がかかるため保護者の理解も必要となり、衣食住などの現地での生活も基本は自身で行うことになる。
リスクはある。ただし、ラ・リーガ側はスペインで活躍するための裾野を広げるという意味での1つの選択肢として考えているようだ。ラ・リーガの日本担当であるギシェルモ・ペレス・カスティージョ氏は、欧州の2つの国を引き合いにだし、スペインにおける日本人の現状をこう分析する。