JリーグPRESSBACK NUMBER
Jリーグ復帰・長友佑都35歳が明かす、あのFC東京「正直ぬるい」発言で本当に伝えたかったこと「僕は勝つために雇われている」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byF.C.TOKYO
posted2021/10/31 11:05
FC東京に11年ぶりに復帰した長友佑都35歳。「正直ぬるい」発言が早速話題になったが、その真意をたずねた
「だって自分がそんな発言したら、それだけのプレー、姿勢と熱量を示さなきゃいけないじゃないですか。言葉として適切かどうかは分からないですけれど、感じたことを言わずに“隠れる”ことだってできる。そっちのほうが楽。でも敢えて口にすることで、自分が見せなきゃいけないし、やらなきゃいけない。そういうプレッシャーを自分に課すという部分で、すべて自分に向けています。東京の一員になったわけですから、お客さんじゃないし、逆に誰も自分に対して何も言わないような環境なんて絶対に嫌。厳しい環境を自分自身でつくっていくという意味で発言したというのが一番です」
のっけから沸点に達するような熱量を吐き出していく。
「正直ぬるい」はチームメイトに向ける以上に、己に向けるもの。それこそが真意なのだが、まだその奥に何かがある気がした。
アドリブ挨拶「ヨッシャー!僕は本気ですから」
2010年の南アフリカワールドカップで評価を高めた長友はイタリア1部チェゼーナに渡り、ビッグクラブのインテルで7シーズン半を過ごした。トルコのガラタサライ、フランスのマルセイユと名門クラブを渡り歩き、今年7月からフリーランスとなっていた。アジア最終予選のオマーン、中国戦を終えてオファーが届いていたFC東京への復帰を決断する。
大義がないと熱く動けないのが彼である。まだリーグ制覇のない古巣をリーグ優勝させる野心と、危機感を持って最終予選を勝ち抜いてカタール行きの切符をつかむ責任が重なることで自らにパワーが生まれるという確信があったに違いなかった。
柏レイソル戦後、味の素スタジアムでファン・サポーターの前に立った。用意されたマイクに、重く、熱く言葉をぶつけたのが印象的だった。
『僕はこのクラブで優勝したいです。このクラブでタイトルを獲りたいです。そのために自分にも厳しく、チームメイトにも厳しく(お互いに)高め合っていきたいと思います。(中略)今は声を出せないと思いますが、みなさんのその熱量であったり、拍手っていうのは僕たちに届きます。もう1回みんなで一丸となって強い東京をつくっていきましょう。ヨッシャー! 僕は本気ですから、優勝しましょうね、みんな!』
サポーターにどんな言葉を伝えるかはまったく考えていなかったという。
「いい試合をして勝ってくれると思っていたので、もっと明るい感じになるのかなっていうイメージはありました。ただ負けてしまって、自分のなかで湧き出てきた素直な言葉というか。もし事前に挨拶の言葉を用意していたら、サポーターの胸にも響かないと思うんです」
FC東京を選手の立場から勝つチームにしていくという宣言。リップサービスの類ではない。あくまでその強い愛と覚悟を示すため。単に、戻ってきたわけではなく、ずっと心にあったクラブを勝たせるため戻ってきたのだと、伝えたかった。そう考えると、このアドリブ挨拶も、「正直ぬるい」発言も線でつながってくる。
「僕は勝つために雇われているわけで…」
勝つ集団にある共通点とは何か。