スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
ヤクルト高津“二軍監督”は予言していた「村上はとんでもない4番になる」3年前『高津プラン』に挙げた野手4人、投手4人の名前
posted2021/10/28 11:05
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Sankei Shimbun
10月26日、DeNA対ヤクルトの試合を神宮球場で見られることになった。
ファンクラブ、「スワローズクルー」向けのパブリックビューイングが行われ、抽選の当選者がスタンドで試合を見ることが可能になったのだ。
入場時には「ヤクルト1000」が「優勝時の乾杯用です」と配られる景気の良さ。
そして数時間後、高津臣吾監督は宙を舞い、神宮のスタンドでは乾杯の音頭が取られた。
高津二軍監督「育てるためなら、負けてもいい」
私と高津臣吾監督の縁は、彼のメジャーリーグ時代にさかのぼる。2004年にシカゴ・ホワイトソックスに移籍した際、シカゴで、アリゾナで、シアトルで話を聞いた。
そして本格的にロングインタビューを行ったのは、2018年にヤクルトの二軍監督として2年目を迎えていた時期だ。
高津二軍監督は、韓国、台湾、独立リーグなどでの現役生活のあと、2014年にヤクルトに一軍投手コーチとして戻り、2017年に二軍監督に就任した。このポジションは、球団にとって一軍監督への登竜門という位置づけになる。
高津二軍監督は、私にこう言った。
「育てるためなら、負けてもいい」
プロの世界ではあるが、二軍はそういう場所なのだと。
たとえば、先発投手が序盤に打ち込まれても、100球ほど投げるまでは交代させない。二軍の目的は、目前の試合に勝つことではなく、その投手に将来のための経験を積ませることだからだ。
このインタビューが面白かったのは、二軍監督になってから、高津さんが野球の面白さを再発見していることだった。
投手のことは知っているけれど、内野手の技術、「レフトとライトはどちらが難しいか?」といったテーマについて、高津二軍監督はコーチ陣と議論を交わしていたという。
「投手ばかりだと知らないことが多いわけ。たとえば、打線の組み方。ファームはDH制だから、セ・リーグの一軍とちょっと勝手が違う。2番、6番、9番が大切だと思ったりね。勉強、勉強、また勉強ですよ」
若手の育成論、そして野球の新たな捉え方などをテーマとして、2018年の暮れに『二軍監督の仕事』(光文社新書)にまとめた。
3年前に力説「村上はとんでもない4番になれる」
そのとき、高津二軍監督は幾度となく、こう力説していた。
「いま、二軍にいるスワローズの若手が、2023年に大きく育っていれば、絶対に戦えるようになる」