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《天皇賞・秋》エフフォーリアの鹿戸調教師を覚醒させた、名馬ゼンノロブロイの教訓秘話「焦る必要はない、普通にやれば良い」
posted2021/10/30 17:01
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph by
KYODO
今週末、東京競馬場で天皇賞・秋(GI)が行われる。
今回で164回目となる天皇賞だが、今から17年前の2004年にこの伝統の1戦を制したのがゼンノロブロイ(牡、美浦・藤沢和雄厩舎)だ。同馬はこのあとジャパンC(GI)、有馬記念(GI)と3連勝。見事にこの年の年度代表馬の座を射止めると翌05年には海を越える。ヨーク競馬場で毎年夏に開催されるイボア開催のインターナショナルS(GI)に挑むため、競馬発祥の地であるイギリスに乗り込んだのだ。
騎手としてゼンノロブロイと海を渡った鹿戸雄一現調教師
結果はエレクトロキューショニストの2着に惜敗するのだが、この時、馬と一緒にイギリス入りしていたのが当時ジョッキーだった鹿戸雄一現調教師。今年の天皇賞・秋に、皐月賞馬のエフフォーリアを送り込む人物だ。
ゼンノロブロイと共に約1カ月間、イギリスのニューマーケットで過ごしていた彼に、当時現地で取材をすると次のように語っていた。
「時代の流れもあって、正直このままジョッキーを続けていくのも厳しく感じています。次のキャリアを考えると調教師を目指したいけど、そのためには見聞を広めるのも大事。藤沢先生はそのあたりも考えてくれて、今回のイギリス遠征に僕を指名してくれたのだと思います」
ニューマーケットを訪れた事はあった。しかし、実際にこの調教場で乗るのは初めてだった。有名なウォーレンヒルだけでなくロングヒルやアルバハトリといったかの地の調教コースをゼンノロブロイと共に駆けた。調教師を目標とした鹿戸騎手には大きな経験になったのは間違いないだろう。
藤沢調教師が大一番で鹿戸を指名した“真相”
しかし、とうの藤沢調教師に話を伺うと、少々違う答えが返ってきた。
「別に彼のため、というのではないし、アタマカズを合わせるためだけでもありません。純粋にゼンノロブロイをしっかり仕上げなくてはいけないと考えていたし、そうなると彼の技術が必要と思い、相談させてもらっただけです」