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「こんな状況でよくやってくれた…」石川雅規の責任感に真中満が涙した日 “小さな大投手”200勝への道《ヤクルト優勝》
text by
真中満Mitsuru Manaka
photograph byNanae Suzuki
posted2021/10/27 17:02
身長167cmという体格で通算177勝(176敗)を挙げている石川雅規。プロ20年目の今季も巧みな投球術は健在だった
プロの世界で長く現役を続けられている理由としては、まず故障がないということ。150km超の速球をめいっぱい投げ込む投手はどうしても故障がちになりますが、石川は自分のフォームで「投げられる球をしっかりと投げる」というタイプ。あとはなんといっても変化球の多彩さです。石川といえばシンカーが代名詞ですが、それにしても1種類ではなく、緩いシンカーと速いシンカーを使い分けている。それらすべてを勝負球として使えるというのは、やっぱり石川ならではの技術ですよね。
「中4日でも5日でも、投げればいっぱい勝てるんで」
石川について言っておきたいのは、とにかく努力家だということ。若いころから、投げない日もバッティング練習やバント練習をよくやっていました。石川って、ほとんどバントを失敗しないじゃないですか。ヒットも通算で100本以上打っている。ピッチングだけじゃなく、「しっかりバントで送ろう」「なんとかヒットで出てやろう」ということを常に考えているわけです。勝つためにできる努力を最大限やりながらプロ野球生活を送っている。
身体能力も高いんですよ。走ったら速いし、バットコントロールもうまい。投げるにしても打つにしても、小柄だけど野球センスがある。要所で相手バッターの“打ち気”を察することができるのも、ハイレベルな野球センスゆえだと思います。
それに加えて、メンタルがものすごく強い。今年は開幕ローテにも入れず、「そろそろダメなのかな……」というところからしっかりと這い上がってきました。普通、あの年齢だったら心が折れてもおかしくない。あまり表には出さないけど、ヤクルトの中でも一番の負けず嫌いじゃないかな。あの小さい体でここまで現役を続けられるというのは彼の心臓の強さ、「まだまだ若いやつらには負けないぞ」というハートの強さでしょう。9月26日の試合で石川が久しぶりに勝った(4勝目)とき、打線の援護(16得点)も相当ありましたけど、やっぱりチームのみんなに「石川さんのために」と思わせる選手ですよね。
僕が監督だったときも、普通の投手は中6日で回すところを、石川だけは中4日でも「投げたいです」と言ってくれました。みんな自分のコンディションを大事にするから、なかなかそういう投手っていないんですよ。でも石川は「中4日でも5日でも、投げればいっぱい勝てるんで」とバンバンいくタイプ。監督からしてみれば、これ以上なく嬉しいピッチャーじゃないですか。