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「こんな状況でよくやってくれた…」石川雅規の責任感に真中満が涙した日 “小さな大投手”200勝への道《ヤクルト優勝》
posted2021/10/27 17:02
text by
真中満Mitsuru Manaka
photograph by
Nanae Suzuki
6年ぶりのセ・リーグ優勝、本当におめでとう! マジックが点灯したあとも足踏みが続いて苦しい中で、2015年の優勝を知っている選手たちの経験が少しでも役立ってくれたのかな……と思うと、監督をしていた僕としても嬉しさがこみ上げてきます。
当時のヤクルトの生え抜きは、2002年がルーキーイヤーだった石川雅規も含めて優勝を経験したことがない選手ばかり。それだけに優勝の喜びは格別なものがありました。今季は2015年にも主力として活躍した小川泰弘や山田哲人がチームを引っ張り、彼らに追随するように村上宗隆や清水昇といった若手も躍動しましたね。一度も優勝できずにプロ野球界を去る選手が多い中、「チームとして勝つ喜び」を知ることは非常に大きいはず。特に若い選手たちがこの優勝でステップアップして、ひと回り成長した状態で来年以降も戦っていけることを今からとても頼もしく感じています。
“温情”とは無縁の現役続行
今季80イニングを投げて防御率3.04と優勝に貢献した石川は、42歳になる来年も現役を続けることが発表されました。あの年齢になると、しばしば「功労者だからもう1年契約しよう」という球団の“温情”で現役続行することがありますが、石川の場合はまったく違います。首脳陣も単純に戦力として残しているので、ベテランにありがちな「まだ続けるの?」という感覚は一切ない。続けるのが当然すぎて、逆に「現役続行」というニュースが出るのが不思議なレベルです(笑)。まだまだ衰えも見られないし、これからもチームに貢献してくれるのは間違いないでしょう。
2002年にデビューした当時から、石川が「勝てる投手だな」というのは感じていました。ストレートは140km前後ですがコントロールが非常に良くて、ベースの左右をしっかり使う。相手バッターの芯を外す技術も高く、バッタバッタと三振を取るわけじゃないけど、とにかく投球のリズムがいい。守る側からすると非常に守りやすい投手でした。石川が神宮でプロ初勝利を挙げたとき、たまたま僕が決勝3ランを打って、ふたりでお立ち台に立ってヒーローインタビューを受けたのは今でも鮮明に覚えています。