小柄な尾田くんはレースで大きく見えた。バネのきいたストライド走法で、快走を連発した。なかでも本人が最も印象に残っているというのが4年時の関東インカレだ。2部の10000mと5000mで優勝。駒大、大東大、神奈川大など当時の箱根上位校のエースたちを撃破して、長距離2冠に輝いている。

「一番バチッと合いましたね。ケニア人留学生もいて、駒大の松下龍治、松村拓希、内田直将なんかもいたんですけど、勝つことができましたから。大学時代は伸び伸びやらせてくれたなと本当に思います。高校時代のようにスピードでガンガン追い込むようなことはなく、箱根駅伝の距離を走るために、じっくりゆっくりやらせてもらいました。それが僕には合っていましたね。スタミナがついたことがロードだけでなく、トラックにもつながったと思っています」

「ニューイヤー優勝」より「箱根に出た」の方が驚かれる

　大学卒業後はトヨタ自動車に入社。強豪チームのなかですぐに主力選手となり、トラックと駅伝で大活躍した。日本選手権10000mには入社1年目から10年連続で出場。2010年には10000mで27分53秒55（当時・日本歴代24位）をマークしている。

2011年の日本選手権にて　©Asami Enomoto

　ニューイヤー駅伝（全日本実業団駅伝）では主要区間を担った。2011年には最長4区を走り、チームは初優勝を達成している。

「ニューイヤー駅伝の初優勝が陸上人生で一番の思い出ですね。ただ周囲は、『ニューイヤーで優勝しました』よりも『箱根に出ました』の方がスゲーとなるんですよ（笑）」

初の東京マラソンでは“あの公務員ライナー”と勝負

　大学時代はマラソンを走ることがないと思っていた尾田くんだが、初優勝したニューイヤー駅伝の2カ月後に東京マラソンに出場。30歳にしてマラソンデビューを果たす。レース後半、尾田くんは日本人トップを走っていたが、38km付近で“公務員ランナー”川内優輝に抜かされる。それでも初マラソン日本歴代3位（当時）となる2時間09分03秒の4位でフィニッシュした。

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