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「ボブ・サップのパンチがうなりをあげて…」王者アーネスト・ホーストがパワーに屈した衝撃《カメラマンが見た名勝負・2002年10月》 

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長尾迪

長尾迪Susumu Nagao

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photograph bySusumu Nagao

posted2021/10/21 11:02

「ボブ・サップのパンチがうなりをあげて…」王者アーネスト・ホーストがパワーに屈した衝撃《カメラマンが見た名勝負・2002年10月》<Number Web> photograph by Susumu Nagao

2002年10月5日K-1 WORLD GP1回戦にて対戦したアーネスト・ホーストとボブ・サップ。“精密機械”とパワーの対決に、多くの注目が集まった

ホーストが引退試合の相手に選んだのはサップだったが…

 そんなホーストでも肉体的な衰えを感じ、2006年に引退を決意する。自国のオランダ大会で、ホーストが引退試合の相手に選んだのは、因縁のボブ・サップだった。記念すべき試合の相手に、サップを指名した理由は明らかにされていない。しかし、私にはホーストの気持ちが理解できる。技術ではなく、体格差で2度もKOされた自分が許せないのではないだろうか。自分自身にけじめをつけたかったのではないだろうか。

 同年5月13日、K-1アムステルダムのメインイベントは、もちろんホーストvsサップのはずだった。しかし、契約のトラブルにより、試合当日にサップが試合をボイコットした。両者が再び交わることはなかった。

 勝負事に“たられば”は厳禁だが、私はこの3度目の対戦を見たかった。いや、興味があったというべきだろう。それは「柔よく剛を制す」のか、「剛よく柔を断つ」のか、どちらに真理があるのかを知りたかったのだ。

ホーストとの約束

 ホーストは2006年12月2日、K-1グランプリの準決勝で敗退。試合後には、涙を流して挨拶をした。大きな声援と拍手の中、愛する日本のリングでグローブを置くこととなった。

 その8年後、ホーストは2014年に現役復帰することを発表。2012年から自らの名前を冠に付けた大会「ホーストカップ」をスタートさせた。K-1のような大規模な大会ではないが、名古屋の同大会でカムバックするらしい。ホースト本人が来日して記者会見を行うというので、私も会見に出席した。

 会見終了後、ホーストが笑顔で私にこう言った

「マイフレンド、試合にはもちろん来てくれるよな?」

 私は彼の眼をじっと見て、

「ああ、もちろんだとも。5タイムズチャンピオンのご指名なら、断れないよ」

 ホーストはその意味を一瞬わかりかねていたようだったが、すぐに理解してくれた。

 そして、満面の笑みで言ったのだ。

「私は5タイムズチャンピオンだから、誰にも負けないよ!」

 私たちは力いっぱいのハイタッチを交わした。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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