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<12年目の戦力外通告>「今後は未定」178試合登板でカープのリーグ3連覇を支えた今村猛のプロ人生の着地点とは
posted2021/10/16 06:01
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
JIJI PHOTO
別れとは、これほどあっけないものなのだろうか。
10月14日、広島から来季の契約を結ばない選手が発表された。育成選手を含めた6投手の中に、3連覇に欠かせないリリーバーだった「今村猛」の名前があった。
09年のドラフト会議で清峰高からドラフト1位で広島カープに入団。プロ1年目から先発で2試合に登板し、中継ぎに回った2年目からは毎年当たり前のように、広島ブルペンには背番号16がいた。
プロ入り1年目から昨年まで11年連続で一軍で投げ続け、登板数は431試合を数えた。12年目で初めて一軍登板なしに終わったシーズン、肩を叩かれた。
中継ぎとして投げるポジションにこだわらなかった。
「一番しんどいところで投げたい。チームの勝利につながる仕事がしたい。勝負どころなら何連投でもしますよ」
なぜ「戦力外」なのか
主にセットアッパーを任され、抑えやロングリリーフもこなした。通算115ホールドは球団最多(歴代21位)だ。球団史に輝かしく残る3連覇を支えた立役者のひとり。それなのに、突然の広島との別れが、自由契約でもなく、引退でもなく、“戦力外”による退団という結末はあまりにも寂しい。
球団は現体制では構想に入っていなかったこともあり、他球団での現役続行の可能性を込めて戦力外としたようだ。ただ、あれだけの功労者ならば、事前に本人の意向を聞く場を設けても良かったのではないだろうか。
球団からは他球団でのプレー機会を探るための判断だったという趣旨の説明があった。それならば、自由契約として早くから移籍先と交渉できる環境をつくることはできた。過去にも、自由契約を求めた主力はいた。
本人に現役続行の意思がなければ、“戦力外”ではなく、“引退”と発表することもできた。そうすれば、引退試合や引退セレモニーを設けることもできたはずだ。