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《資産46兆円のサウジマネー》がニューカッスル買収… PSG、シティを上回る資金力でモウリーニョ、ハーランド獲りもある?
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2021/10/15 11:01
3億ポンド強で買収されたニューカッスル。イングランド北東部の古豪が手に入れた資金力はシティの14倍の規模となる
プレミアに残留できれば来夏にはハーランド獲りも
もちろん、監督が誰であれ、冬の移籍市場でプレミアの新興勢力によるクーデターばりの大物獲得が起こるとは思えない。しかし、今夏の補強も昨季にアーセナルからレンタル移籍していたMFジョー・ウィロックを買い取った程度だったチームは、残留争いの泥沼を回避するために即戦力追加を必要としてもいる。
2億ポンド(約300億円)と推定される予算を活用すれば、カラム・ウィルソンに依存する最前線に、ユナイテッドで脇役に回りつつあるエディンソン・カバーニを呼び寄せられる。また買収交渉が進んでいた昨春にターゲットとされたドニー・ファンデベークを不遇のユナイテッド・ベンチから自軍の中盤中央に救い出すことも可能だろう。
最終ラインの中央には、経験豊富なカリドゥ・クリバリーをナポリから迎える手もある。新たなチャンス供給源には、バルセロナでハマり切れずにいるフィリペ・コウチーニョ。現主力ミゲル・アルミロンの4倍以上という年俸は前オーナー下ではあり得ない規模だが、新オーナー下では十分にあり得る2000万ポンド(約30億円)弱だ。
そして無事にプレミア勢として来夏を迎えれば、金銭面ではアーリング・ハーランド(ドルトムント)やムバッペですら国内外のビッグクラブと競り合える。
中東から目覚まし音を聞いたイングランド北東部の眠れる巨人は、ホームにトッテナムを迎える10月17日のプレミア第8節で、オーナー交代後の第1歩を踏み出す。
選手の顔ぶれは変わらず、暫定指揮下のチームだったとしても、希望に胸を膨らませたファンが、小高い丘の上に立つセント・ジェイムズ・パークへと意気揚々と向かう光景が目に浮かぶようだ。
相手スタンドからは、人権侵害に関するブラックジョーク全開のチャントが歌われても不思議ではない。サウジ資本による買収初戦を伝えるニュースでは、オイルマネーと引き換えに良心を売った国内サッカー界の誤った船出として伝えられるかもしれない。しかし、「我がチーム」に夢を見るサポーターとしての“人権”を取り戻したニューカッスルの人々にとって、2021年10月7日は記念すべき運命好転の日に他ならない。