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「僕と彼女とは運命的な出会いでした」“純白のアイドル馬”ソダシの主戦騎手が告白する《白毛GI馬のもう一つの才能》
text by
江面弘也Koya Ezura
photograph byNaoya Sanuki
posted2021/10/07 11:05
2020年阪神JFで史上初の白毛馬GI制覇、21年桜花賞でレコード勝ちの“奇跡の白毛馬”ソダシ
「ソダシは以前乗った白毛よりは完成度が高くて、すごくしっかりしていました。そのときはまだ、重賞とかGIに勝てるまでになるとは思いませんでしたけど」
函館のデビュー戦、ソダシの単勝は5.9倍だった。吉田は言う。
「ぼくはすごく自信あったのに3番人気で。白毛なのに話題にもなってないし、6倍つくならおいしいよな、と思いましたよ(笑)」
新馬戦を快勝してから連戦連勝だった。須貝からは「取りこぼすなよ」と言われた。吉田もその意味を十分に理解していた。勝つたびにソダシの人気は高まり、無敗の5連勝で桜花賞馬となると、普段競馬を見ない人にも知られたアイドルになっていた。
オークスは8着に負けたが、短い休みを挟んで出走した札幌記念では年上のGI馬を相手に完勝したソダシは、万全の状態で10月17日の秋華賞に臨む。
じつはダート転向の可能性もあった
スピードがあり、性格もおとなしく、それでいて競り合って負けない勝負根性がある。それだけでなく、ソダシには「まだ見えない可能性」があった。そのひとつが「ダート」である。ダートコースで調教したとき「いいキャンターをするな」と吉田は思ったという。
じつは、ソダシは桜花賞前のどこかで躓いていたら、ダート路線に転向していた可能性もあった。2歳のときはダートも選択肢のひとつで「来年の目標は関東オークス(川崎競馬場)という話もあった」と吉田は言う。
母のブチコは4勝のすべてがダートだった。父のクロフネはNHKマイルカップの勝ち馬だが、ジャパンカップダート(現チャンピオンズカップ)では7馬身差(しかもレコードタイム)で独走した史上最強のダートホースだ。血統は「芝よりも砂」と言っている。
「ソダシはいい意味で期待を裏切って、ずっと勝ってきた。オークスで負けたあと、須貝先生に『関東オークスかジャパンダートダービー(大井競馬場)に行きませんか』と進言したんですけど、『ダートはいつでも使えるから、アカン』って(笑)」