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[新調教師は語る]アパパネ&蛯名正義「三冠への三つの変化」
posted2021/10/08 07:02
text by
田井秀一(スポーツニッポン)Shuichi Tai
photograph by
Photostud
その華奢な馬が、大輪の華を咲かせるとは誰も思わなかったはずだ。トップジョッキーの直感は現実となり、人馬一体で駆け抜けた幸せな結末。今年2月にステッキを置いた名手が、ヒロインと過ごした日々を振り返った。
名牝との出会いは必ずしも特別なものとは限らない。2009年7月5日、翌年に史上3頭目となる牝馬三冠の偉業を成し遂げるアパパネと蛯名正義は、福島競馬場で初陣を迎えた。
「非力な馬でした。真面目で走ることに前向きな性格はしていましたけど、物足りなさを感じていたのが正直なところです」
鞍上の手応えに間違いはなかった。アパパネは直線で一旦は先頭に立ったものの後続にあっさりとかわされ3着敗退。1着馬から5馬身も離され、後に競馬史に名を残す競走馬になるとは到底想像がつかない平凡なデビュー戦だった。
父キングカメハメハに由来し、ハワイに生息する赤い鳥(和名=アカハワイミツスイ)の英語名から名付けられたアパパネ。凡庸だった若駒は、いかにして名牝への道を駆け上がったのか。千変万化の現役生活を送ったアパパネを三冠牝馬たらしめたのは3度の大きな変化だった。
最初の変化はデビュー戦から間もない、約3カ月後。成長を促すため放牧に出ていたアパパネはまるで別馬のように進化して帰ってきた。新馬戦で452kgだった馬体重が2戦目では476kgに増量。蛯名は「秋まで間隔を空けたら馬が随分良くなってびっくりしました。20kg以上増えて、体もたくましくなっていて“これなら走ってくれるのでは”と感じました」と振り返る。