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3人のプロ野球スカウト「ウチに入れば、左投手でトップクラス」“ドラ1候補”西日本工業大・隅田知一郎、ドラフト直前の本音を聞いた
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph bySankei Shimbun
posted2021/10/07 17:04
6月の全日本大学選手権でドラフト戦線の“トップランナー”に。西日本工業大・隅田知一郎投手(177cm76kg・左投左打・波佐見高)
「もちろん、12球団どこでも、喜んでお世話になりますが、自分、たとえば阪神の甲子園球場みたいな、良くも悪くも、ファンの方たちの反応がはっきりしてるところで投げてみたいって気持ちがあるんですよ」
罵声を浴びる覚悟もあるという。
「今のリーグも、かなりの言葉が飛んでくるんで、もう慣れてます。逆に、それを自分に対する励みにして。言われると、ものすごいアドレナリン、出るんですよ」
3人のスカウト「ウチなら、左腕でトップクラス」
取材の日、3人のスカウトの方が、調査書を携えて西日本工業大のグラウンドを訪れていた。
どこの球団とは言えないが、3人が3人とも、
「今のウチの投手陣なら、左腕では間違いなくトップクラス」
揃って、苦笑いしていたものだ。
帰り際、武田啓監督の問わず語り。
「ほら、お寺の鐘が鳴ってるでしょ。あれが5時で、ああやって、カラスが山に帰ってくんですよ」
言われて見上げると、町の方向から飛んできたカラスの大編隊が、センターの向こうにそびえる三角おにぎりみたいな山を目指して飛び去っていく。
「こんな田舎で、真面目に練習を重ねて……私も1、2年の時はいくらかは言いましたけど、そのあとはあいつに教えたこと、何もないです。みんな、隅田が自分で考えて、開発して、自分を大きくしてきた。皆さん、フォームがいいとか、球質がいいとか、言ってくれますけど、あいつのいちばんいい所は自分から何でもできることなんですよ」
寮生活でも、ほとんどの時期を自炊で栄養を摂ってきた隅田知一郎。昨夜は「豚キムチ」を作ったという。
プロの食事とトレーニングによって、もうワンランク、ツーランク、パワーアップできた時、彼のクロスファイアーが一体どんなうなりをあげて、打者の胸元、足元を襲うのか。
そんな「伸びしろ」も併せ持ちながら、1位重複確実といわれるドラフトまで、あと少しだ。