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〈祝40歳〉「イブラ様」のヤンチャで男前な5大事件 テコンドーで敵も味方もKO、無礼な若手に激怒 でも日韓W杯で…
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images/Takuya Sugiyama
posted2021/10/03 06:00
ユーベ、インテル、ミランで無双だったイブラヒモビッチ様。40歳の今もなお、膝の痛みすら感じさせない豪胆さに感服するばかりだ
5)イブラ様、まさかの「おまえが謝れ」
歳月と経験を重ね、酸いも甘いも噛み分けたイブラは、現在のミランの若手選手たちにとって身近な師であり、越えるべき壁であり、頼れる兄貴でもある。
9月12日のラツィオ戦終了直後、ベンチで揉め事が起きた。ミランMFサーレマーケルスがラツィオ監督サッリを“老いぼれ”呼ばわりし、敵将は激昂したのだ。
事態を察したイブラヒモビッチは、サーレマーケルスの首根っこをつかんで叱りつけ、サッリの下へ連れていき「年配者に敬意を払え」と謝らせた。大将たるイブラが規律と誠意を示したことで、礼を尽くしてくれたと意気に感じたサッリは快く矛を収めた。
ミランの選手たちは、イブラヒモビッチが決して“ウザい先輩”ではないことを知っている。
ズラタン様と日韓W杯の知られざる秘話
ズラタンは小さい相手、弱き者を踏みつけない。
彼が抗い、立ち向かってきたのは、つねに自分より大きな権威や強者だった。
時代の要求に従って現代の選手たちは皆、お行儀良くなった。大言壮語でメディアもファンも楽しませてくれる、イブラヒモビッチのような選手は絶滅危惧種になった。SNSでバズるのとは、少しちがう。
「俺様は世界最高」「俺様は神」とうそぶく彼は、自分の根っこが故郷マルメの貧困街にあることをつねに忘れない。だから、シンパであろうがアンチだろうが、イブラの言動は一人ひとりの胸に響くのだろう。
イブラヒモビッチは九州の宮崎に来たことがある、と言ったら、あなたは驚くだろうか。
まだ荒削りだった20歳のズラタンは、02年日韓W杯を控えたスウェーデン代表の一員として、大会事前キャンプのため過ごした宮崎で汗を流した。キャンプ期間中に地元のアマ選抜チームと親善試合も行った。宮崎県総合運動公園には、FWラーション、MFリュングペリらとともにイブラヒモビッチのサインが刻まれた記念プレートがある。
ボロボロの体でも代表復帰した“サムライ”
あれから20年弱が経ったが、老兵イブラヒモビッチはまだピッチを走っている。
今年3月、EURO2016の後一度は引退したスウェーデン代表から、再びお呼びがかかった。代表監督アンデルソンは10月のカタールW杯欧州予選にイブラを招集した理由を「故障していることは承知しているが、いてくれるだけでチームのためになる」と強調した。