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「男子選手に殴られ…」「給料未払い生活」常軌を逸した環境を乗り越え、朱里がスターダムで“メジャータイトル”を制覇するまで 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byNorihiro Hashimoto

posted2021/10/02 11:00

「男子選手に殴られ…」「給料未払い生活」常軌を逸した環境を乗り越え、朱里がスターダムで“メジャータイトル”を制覇するまで<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

スターダムのリーグ戦、5★STAR GPにて悲願の初優勝を果たした朱里

「プロレスラーとしてのプライドがある」

 その財産には、もちろん格闘技の経験も含まれる。UFC時代を除いてはプロレスと並行しての活動。プロレスで月10試合以上しながら格闘技の練習に励み、減量も。Krushの前日計量を終え、その夜にプロレスのタッグマッチで30分フルタイムの試合をしたこともある。翌日のKrushは動きが悪すぎてセコンドに怒られたそうだ。UFCでの2戦目はチリ大会。30時間かけて現地に向かい、時差ボケに苦しんだ挙句33秒でTKO負けした。そんな経験、彼女以外どんなプロレスラーもしていないだろう。

 今年6月の林下詩美戦と9.25大田区大会でのリーグ最終公式戦(vs.彩羽匠)では、両足タックルを仕掛けるとそのまま全力で走り、相手を場外に叩き落としている。プロレスではヒザをマットにつけてのタックルが多いから、これはMMAスタイル。MMAでは走った勢いでテイクダウン、もしくは金網に押し込むのだ。他にも朱里の試合では、細かい部分で“格闘技的”な技術が見られる。

 そのことについて聞いてみると、本人は「言われてみればそうですね」。あまり意識してはいなかった。自然にそうなっていただけで、ことさらに格闘家としての技術を見せようとしていたわけではないのだ。

「私はプロレスからスタートして、今はスターダムでプロレスに専念してます。プロレスラーとしてのプライドがあるし、格闘技は格闘技、プロレスはプロレスだという感覚ですね」

 むしろ格闘技の経験が役立ったのはフィジカルの部分のようだ。林下の赤いベルトに挑戦した試合では、30分時間切れのあと延長戦を行い、トータル43分19秒闘って両者KOの引き分けになった。リーグ戦では最終公式戦で彩羽と20分ドロー。この試合はリーグ戦のベストマッチに選ばれた。勝ち点首位で決勝進出が決まると、同日に渡辺桃と18分36秒の熱戦。彩羽戦と渡辺戦の間には1試合しか挟まれていなかった。彩羽も渡辺も蹴りが得意だから、打撃のダメージは蓄積する一方だったはずだ。

男子プロ選手相手の“常軌を逸した練習”

 リーグ公式戦での林下との対戦も時間切れ引き分け。今回に限らず、朱里は若い選手たちに交じってもスタミナやエネルギッシュな闘いぶりでまったく引けを取らない。なぜそれが可能なのか。

「それはやっぱり、めちゃくちゃ練習してきましたから」

【次ページ】 「プロレスラーであるからには、自分が一番輝きたい」

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