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今年で9度目の凱旋門賞挑戦・武豊は“3回”直前で断念していた…サクラローレルにジャパン、ではもう1回はどの馬だった?【秘話】
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph byAFLO
posted2021/09/30 17:02
2007年の凱旋門賞を直前で断念し、翌年に再挑戦を果たしたメイショウサムソンと武豊
現地入り後も様々な手を打った。
その1つとして、シャンティイ競馬場を利用しての追い切りがあった。6月の宝塚記念(GI)2着以来の出走となるため、中間にあえて競馬場へ輸送して追い切りを敢行したのだ。
「厩舎からは10分程度の輸送なので、ロンシャン競馬場よりずっと近いのですが、馬運車で運ぶ事で精神的にシャキッとしてくれるだろうという狙いがありました」
高橋成師はその心をそう語った。
また、装蹄に関しては日本から装蹄師を連れて行くのではなく、現地で依頼する事にした。この年の1番人気が予想されるザルカヴァと同じ装蹄師に蹄鉄を打ってもらったのだ。
「滞在中に3回、打ち直しました。全てザルカヴァと同じ装蹄師にやってもらいました。初めての時にはサムソンがイライラしてだいぶ時間を要したので、2回目、3回目は前脚と後ろ脚を2日に分けて装蹄しました。装蹄師さんと相談した結果、出来る限り馬に負担をかけないようにという事で分けてやるようにしたんです」
こう語ったのは高橋義忠調教助手。
武豊「挑戦して負けた方がスッキリ」
このように次から次へとカードを切り続けた挑戦だったが、結果的にはヨーロッパの高き壁に阻まれる。優勝したのは1番人気に応えたザルカヴァ。メイショウサムソンは16頭立ての10着という成績に終わり、騎乗した武豊騎手は次のように語った。
「状態は良く感じたし、道中はザルカヴァを目の前に見られる位置につけられました。『これなら!』と思ったけど、勝負どころでアッと言う間に突き放されてしまいました」
そう語った武豊騎手だが、しばらくすると微笑を浮かべつつ言った。
「まぁ、出られなかった前年を思えば、挑戦して負けた方がスッキリはしています」
それから13年、今年の凱旋門賞の結果がどうなるかは分からないが、武豊騎手だけでなく、クロノジェネシスとディープボンドの日本勢もまずは無事にゲートに収まる事を期待して、注目しよう。
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