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「負けました、では帰れない」“元スターダム”彩羽匠が語った長与千種イズムとリングの美学…“闘う宝塚”は5★STAR GPを制するか? 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byNorihiro Hashimoto

posted2021/09/24 11:04

「負けました、では帰れない」“元スターダム”彩羽匠が語った長与千種イズムとリングの美学…“闘う宝塚”は5★STAR GPを制するか?<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

今年の5★STAR GPに唯一他団体から参戦している彩羽匠。9月11日の上谷沙弥戦での渾身のキック

 7月のマーベラス後楽園ホール大会で復帰した彩羽だが、その興行で先輩のKAORUがケガをしてしまう。8月8日にはデビュー35周年を迎え、その日に後楽園で引退興行をするはずのKAORUだったが、それも不可能になった。大会自体も、長与が中止の判断を下す。新型コロナウイルスの感染拡大にともない、所属選手が「濃厚接触者」に該当したためだ。道場と寮は隔離体制に。8.8後楽園当日には隔離期間を終えている予定だったが、短い期間とはいえ練習から離れていた選手を“ぶっつけ”で試合に出すわけにはいかないと長与は考えた。

 さらに8月末には、選手3人が退団。もともと所属選手の数が少ないマーベラスだから戦力的にもイメージ的にも大打撃だった。そういう中で、彩羽は業界トップの団体に闘いを挑んでいる。

「復帰してから、だいぶ精神的に忙しいというか(笑)。でもここから上がるも下がるも自分しだいですからね。後輩たちのためにも優勝しないと。マーベラスに残ってくれた子たちを安心させてあげたいんですよ。自分が優勝して“マーベラスは凄い”となって、後輩たちに“この団体でよかった”と思ってもらいたい。そして、その姿を長与さんに見てもらいたい。スターダムとマーベラスではメディアの注目もお客さんの数も違う。乗り込んで、食って、マーベラスの存在を見せつけたいです。そういう意味ではスターダムの選手とはモチベーションの持ち方が違うかもしれない」

リーグ戦優勝の先に見据えるもの

 目指すのは優勝だけではない。ワールド・オブ・スターダム王座は女子プロレスラーとして最初に抱いた目標。思い入れがあるベルトだ。その通称である“赤いベルト”は、長与千種が所属した全日本女子プロレスの頂点、WWWAシングル王座と同じ。

 リーグ戦に優勝すれば、タイトル挑戦権も得られるだろう。チャンピオンの林下とは公式戦で引き分けだから、決着戦にもなる。リーグ戦の後に控えるビッグマッチは10月9日、女子プロレスでは26年ぶりとなる大阪城ホール大会。彩羽がプロレスラーを志すきっかけ、長与千種vs.ダンプ松本が行なわれた会場だ。

「ベルトがあれば、もっと自分の存在を出していける」

 自分の存在が知られれば、それだけマーベラスも知られることになる。師匠のために、同じ師匠に憧れた後輩たちのために勝ちにいく。そこに今の彩羽の強さがある。

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