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「負けました、では帰れない」“元スターダム”彩羽匠が語った長与千種イズムとリングの美学…“闘う宝塚”は5★STAR GPを制するか?
posted2021/09/24 11:04
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
「思ったより足を引っ張られている」
スターダムのリーグ戦、5★STAR GPに参戦している彩羽匠(いろはたくみ)の言葉だ。エントリーした2ブロック20選手中、唯一の他団体所属。長与千種率いるマーベラスプロレスから乗り込んできた。ここまで8戦して4勝2敗2分。9月25日の大田区総合体育館大会、朱里とのリーグ最終戦にブロック突破=同日の決勝戦進出がかかっている。
「そううまくはいかないだろうな、とも思ってはいたんですが、やっぱり全勝優勝する意気込みでエントリーしたので」
苦笑いした彩羽だが、その試合内容、存在感が光っているのは間違いない。“赤いベルト”ことワールド・オブ・スターダム王座を保持する林下詩美とは20分時間切れ引き分け、白いベルト(ワンダー・オブ・スターダム)の王者である中野たむには勝利。スターダムの2大チャンピオンと闘って負けていないという結果も大きい。
「マーベラスのエースをやらせてもらってるので」
もともと、彩羽はスターダムでデビューしている。だが2015年、長与の新団体マーベラスの旗揚げとともに移籍を果たした。1993年生まれの彼女は、自分が生まれた頃の女子プロレスを映像で知り、さらに遡って長与に衝撃を受けた。プロレスラーになろうと思ったきっかけは、全日本女子プロレスにおける長与千種vs.ダンプ松本の「敗者髪切りマッチ」(1985年8月28日)だ。北斗晶たちの試合で「プロレスって凄い」と憧れ、長与を見て「私もあんなふうになりたい、プロレスラーになろう」と決意したそうだ。
彩羽にとってスターダムは“古巣”になる。ただ自分がいた頃とは選手の顔ぶれも大きく変わっているから、今は「アウェイ感がある」そうだ。業界最大の女子プロレス団体に“長与千種が率いる精鋭集団”の看板を背負って挑んでいる感覚。リーグ初戦、舞華との試合に勝つと、彩羽は初戦だけは絶対に負けられなかったとコメントしている。曰く「マーベラスのエースをやらせてもらってるので」。
リーグ戦で当たる選手はほとんどが初シングル対決。「相手に合わせすぎてはいけない」と、他の試合をあまり見ないようにもしているという。
「結果はもちろんですけど内容でも勝たなきゃいけない。絶対に比較されるので、リーグ戦の他の試合とも勝負です。そこでお客さんに“あんまり印象に残ってない”と言われたら負けなので」