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「吹っ切れましたよ」オカダ・カズチカが棚橋弘至との闘いでついに解いた“レインメーカー”の封印…9年前のIWGP初戴冠も棚橋戦だった〈G1クライマックス〉
posted2021/09/23 11:02
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
「こんなもんで満足してんじゃねえよ。この野郎。まだ始まったばかりなんだよ」
残り試合時間24秒、棚橋弘至をフォールしたオカダ・カズチカは叫んだ。それは観客に向けてのアピールと言うよりは、自分への叱咤に聞こえた。31回目を迎えた新日本プロレスのG1クライマックス開幕2日目、9月19日の大阪府立体育会館(エディオンアリーナ大阪)のメインは棚橋vsオカダだった。
「グッときた」
先に入場の花道に立ったオカダは観客席に視線を投げた。
「2012年2月と6月に(ここで棚橋と)やった。先に入場したのは2月だけなんで、そしてまたこの同じ会場で……グッときた。グッときただけで終わってもしょうがないので、何かきっかけをつかまないといけないと思っていました」(オカダ)
9年前の「レインメーカー・ショック」
オカダは9年前の2月12日を思い出していた。挑戦者としてIWGP王者棚橋に挑んだ時のことだ。オカダは繰り出したレインメーカーで棚橋に勝って、初めてIWGP王者となった。それは強いオカダの始まりのきっかけだった。
それがどれだけ、特別な日だったか。棚橋はベルトを巻いて花道を引き揚げて行くオカダを寂しそうに見送っていた。オカダは花道の途中でリングを振り返って両手を広げた。その鮮烈な記憶は「レインメーカー・ショック」とも呼ばれた。