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「雑草魂で頑張ります」高橋藍20歳に備わる“悔しさをバネにする力”…飛躍的な成長の理由とアジア選手権で見えた手応え
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byYUTAKA/AFLO SPORT
posted2021/09/20 11:02
主将・石川祐希が不在だったアジア選手権の2戦では、“逞しさ”を感じさせるプレーを披露した高橋藍
一方で、東京五輪では明確な課題も見えた。「前衛でのスパイク」だ。後衛でのパイプ攻撃は大きな武器だが、前衛レフトからのスパイクは試合を重ねるごとに高いブロックに対応された。アジア選手権の前、高橋はこう語っていた。
「世界の高さに対する前衛でのスパイクの打ち方という部分で、キャプテンの石川選手を見ていても、経験の差ってすごくあるなと感じました。世界と戦っていくために、どのようなスキルを身につけなければいけないのか、高さに対してどのような打ち方をしないといけないのか、すごく考えて取り組んでいます」
アジア選手権でも、高さのある中国、オーストラリアのブロックに苦戦した。中国戦では途中交代となってわずか3得点に終わり、チームも敗れた。
それでも決勝のイラン戦では、ラリー中の難しいトスも2枚ブロックの内側を抜いて決めるなど、60%という高いスパイク決定率を残し手応えを得た。
「相手の裏をかいて、打つ瞬間に思考を変えたり、相手ブロックとの駆け引きは常に意識して今大会やっていましたが、その中で少し甘いコースに打ってしまってシャットアウトを食らう場面もあった。でも今日のイラン戦は、自分のコンディションもよく、冷静にブロックをよく見て、状況判断をして、しっかりとコースに打ちきれていました。そこは成長したなと、自分自身感じながらやっていました」
国際大会にデビューしてからわずか数カ月で、着々と進化を示している。
高橋は、悔しさや反省をバネにして大きく飛躍する反発力を備えている。
「雑草魂でしっかり頑張ります!」
日本男子バレーでは史上最年少の19歳で五輪出場をかなえた時の人だが、高橋は決して、華やかなエリートコースを歩んできたわけではない。
今年のネーションズリーグの期間中、恩師である東山高の豊田充浩監督が、「常に謙虚な姿勢を持って、日々努力して頑張れよ」とLINEでメッセージを送ると、高橋からはこう返事が来た。
「雑草魂でしっかり頑張ります!」
“雑草魂”は2人の合言葉のようになっている。
日本代表選手の多くが、学生時代にユースやジュニア代表を経験しているのに対し、高橋にはその経験がまったくない。当時は選ばれなかったことに対して非常に悔しい思いをしたが、豊田監督は「ユースに入った入らなかったというのは関係ない。高校3年間、東山でしっかり練習して結果を出せばいい」と言い聞かせた。
高橋が東京五輪メンバーに選出された時、豊田監督は感慨深げにこう語っていた。
「今でこそああなっていますけど、彼自身、最初から華やかな、もてはやされるようなところからスタートした子じゃないんです。努力して努力して、コツコツコツコツやってきたからこそ。
ユースやジュニアには選ばれずにずっと来ましたけど、僕は逆に、それがあの子にはよかったと思ってるんです。ハングリーさというものをしっかり持って、東山で育っていってくれたので」