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9年ぶり勝利のマクラーレンで、日本人エンジニア今井弘が見据える常勝軍団復活への道筋<テニス新女王ラドゥカヌも興奮⁉> 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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photograph byGetty Images

posted2021/09/16 06:00

9年ぶり勝利のマクラーレンで、日本人エンジニア今井弘が見据える常勝軍団復活への道筋<テニス新女王ラドゥカヌも興奮⁉><Number Web> photograph by Getty Images

トロフィーを掲げ、スタッフとともに歓喜の記念写真に収まるリカルド(右)とノリス(左)

 しかし、チームは人為的なポジションの入れ替えを明確に否定した。チームとして一丸となってクリーンに戦う姿勢が貫かれた瞬間だった。初優勝は逃したノリスだったが、レース後にはその決定を尊重するコメントを残した。

「みんなは僕たちの今日の1−2フィニッシュは、他の2人がクラッシュしたためだと思っているんだろうけど、今日のダニエルはスタートから先頭に立って、その後もレースをずっとリードしていたことを忘れないでほしい。今日の彼は勝者に最も相応しいドライバーだと、僕だけでなく一緒に戦ったすべてのドライバーが感じていると思う」

 リカルドが移籍してきてからいかに悩み、努力してきたかを知っているからこそ、今井もこの日の勝利を喜んだ。

「彼のドライビングスタイルとマクラーレンのクルマを速く走らせるための要求がなかなかマッチしていなかった。もちろん、最初からなかなかうまくいかないことは、事前に想定していましたが、これまでダニエルが乗ってきたクルマとわれわれのクルマの特性が違っていて、その分アジャストに時間がかかっていたんだと思います」(今井)

常勝軍団復活への第一歩

 その努力はこの優勝で報われはしたが、次の勝利を手にするには、まだまだ努力が必要だと今井は言う。それは、優勝したリカルドに対してだけでなく、9年ぶりの勝利を飾ったチームに対しても同様だ。なぜなら、エンジニアたちを束ねる今井の目標は9年ぶりの1勝ではなく、マクラーレンをかつてのようにタイトル争いができる常勝軍団として復活させることだからだ。

 チーム全員がピットレーンに集合して恒例の記念撮影を終えた今井は、スタッフたちをエンジニアリングルームに集め、こう説いた。

「喜ぶのはいいけど、ここから何か学んで、それを次に活かしていかないとF1では次がないということを忘れないでほしい。今日、何が良かったか、そして何が悪かったのか、あるいはもっとできることはなかったのか。そういうことをみんなで考えていこう」

 イタリアGPのレース後、最後までエンジニアリングルームで仕事をしていたのは、マクラーレンだった。

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