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インテルの胸から「PIRELLI」のロゴが消滅、メッシのボーナスの一部はトークン支払い… 仮想通貨はサッカー界の救世主か?
posted2021/09/15 11:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
カルチョの世界で仮想通貨の侵食が始まった。
開幕から数戦、王者インテルのユニフォームに違和感を覚えた人はいないだろうか?
青と黒の縦縞から26年間見慣れた「PIRELLI」の白抜きロゴが消え、代わりに「$INTER FAN TOKEN by Socios.com」(以下ソシオズ・ドットコム社)という文字列が並んでいる。新たなスポンサーは、ファントークンと呼ばれる“仮想通貨”のデジタル・プラットフォームだ。
仮想通貨の発行と譲渡、売買の管理が彼らの商売で、9月10日に“初売り”された100万枚分のインテル銘柄トークンは、発売開始から数分間で売り切れた。
ファントークンはサッカー界の救世主になり得るのか。ソシオズ・ドットコム社とインテルの狙いはどこにあるのか。
財政難のインテルからはコンテもルカクも去った
ソシオズ・ドットコム社のファントークンを導入しているクラブはインテルだけではない。
セリエAではユベントスやミラン、ローマが同社のプラットフォーム上でトークンを発行しており、マンチェスター・Cやアーセナル、パリSGやA・マドリーといった世界中のクラブや代表チームなどもトークンを活用している。
トークンの購入者に与えられる特典はクラブ毎に異なり、ユニフォームやチームバスのデザインを決定するための投票権だったり、レジェンドOBとのスタジアム観戦やチームのアウェー遠征に同行できる権利だったりさまざまだ。
キプロス1部リーグのアポロン・リマソールというクラブでは、トークン購入者たちに“テストマッチの先発11人とフォーメーションを選ぶ権利”が与えられた。
デジタルデータのトークンは購入してお終いではなく、株や為替のように価値が変動し、それ自体を売買して利益を上げることができるため、資産とみなすこともできる。
「業界のリーダーたるソシオズ・ドットコム社とスポンサー契約できたことはインテルにとって大変喜ばしい。クラブのブランド力の証といえるでしょう」
インテルの金融部門を仕切る経営役員、アレッサンドロ・アントネッロはえびす顔だ。年間2000万ユーロのスポンサー料に加え、将来的にはトークン売買手数料の一部もクラブの金庫に収まる。