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インテルの胸から「PIRELLI」のロゴが消滅、メッシのボーナスの一部はトークン支払い… 仮想通貨はサッカー界の救世主か? 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2021/09/15 11:00

インテルの胸から「PIRELLI」のロゴが消滅、メッシのボーナスの一部はトークン支払い… 仮想通貨はサッカー界の救世主か?<Number Web> photograph by Getty Images

長年のインテルのユニフォームの胸に刻まれてきた「Pirelli」のロゴが今季からは見られなくなった

 インテルが財政難に喘いでいることは万人の知るところだ。

 スクデット監督であるコンテが昨シーズン終了後すぐにクラブから去ったのは、優勝決定戦の前日、張康陽会長から主力選手放出が避けられないことと人件費の15%削減が必要である、と非情宣告を受けたからだ。優勝の立役者であるMVPルカクも、チェルシーから大枚1億1500万ユーロを積まれたら、あっさりと放出している。

メッシのボーナスの一部もトークンで支払われる

 ソシオズ・ドットコム社が今年に入って計上したトークン取引高は2億ユーロを超えるという。「ファンとクラブがデジタル仮想通貨を介して、より密接に関わり合うことができます」というのが同社の謳い文句だ。

 一般のファンがインテルのユニフォームのカラーリング案に口を出したい、と願っても、まず実現しようがない。

 本気でそれを叶えようと思ったら、ミラノのクラブ本社に入社するとか、サプライヤー企業に就職して重役になるしかない。そもそもイタリア人にとっても相当狭き門をくぐり抜けたうえで、機会を何年も待ち続ける忍耐も運も必要だ。ハードルが高すぎる。

 ところが、ファントークンを介せば、世界中どこからでも誰でもスマホ一つでお手軽にそれが可能になるのだ。飛びつく人間は大勢いるだろう。

 コロナ禍による経済損失はイタリアだけで11億ユーロに上るといわれており、デジタル仮想通貨市場の参入はサッカー界の新たな金脈として期待されている。

 ただし、トークンは自由市場で価値変動する“金融商品”的性格がある以上、それ自体が投機ゲームの対象になるリスクがあることも覚えておく必要があるだろう。

 極端な例を挙げれば、パリSGのトークンはこの1年で価値が14倍まで跳ね上がった。今夏入団したFWメッシのボーナスの一部が、500万ユーロ相当のトークンで支払う契約になっていることも話題になった。

 瞬く間に売り切れたインテルのトークン初回販売分についても、SNS上ではすでに高額売買をもちかけるやり取りが世界中の言語でなされている。

【次ページ】 購入者が先発も交代も決められるように

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